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2012-10

もてなし

古民家に事務所を移してから近所のおばあちゃんが福祉センターへお友達とカラオケ会にいく少し前にコピーをして欲しいと定期的に来てくれる。目が悪い友人も大きい字だったら見えるだろうという心遣いだ。

うちのレーザープリンタはグラフィックデザインに特化したのものでコピーはできないのだが、地域の方にはコンビニや福祉センターにあるようなコピー機と変わらない大きさなのでコピーができると勘違いされる。勘違いでも、コピーしたいという要望にやはり答えてあげたくて、スキャナーにオートシートフィーダーのオプションを追加した。A3でもA4でも原稿を重ねてセットすればがしゃがしゃ読み込んでくれる。といってもスキャナーもグラフィックデザイン用のもので、高精度だが読み込むスピードは速くない。

速くないのだが、その間ゆっくりお話ができると思えばそれも悪くない。というより最近はスキャニングとプリントよりも話の方が長くなるくらいだ。はじめよりもおばあちゃんの方からいろいろと話しかけてくれるようになったのが嬉しい。

ご希望のものが印刷され、「はい、ほな今日は6枚やから60円ね~。」と言うと、100円。「今日は24枚やから240円ね~。」と言うと500円。釣りは絶対に受け取ってくれず、さらに「うちにあったもんやさかいに」とビールやジュース、スナック菓子をくれたりする。

はじめはコピー代より数倍も高価なものをいただくのに尻込みしていたものの、そんな話を友人としていたら、「そういえばうちにも来客用のビールのストック絶対あるわ。」とのこと。よく考えればうちの家にもある。

ひとをもてなすためのストックがある。
それこそ田舎の良き心だなと思いほんわかする。

ただし、そのもてなしは無理しない程度で構わないので、相互にないといけません。もし困っておられたら助けてあげなきゃならないし、たまたま喜ばれそうなものを食べ切れないぐらい手に入ったら分ける。そうやって共有する。義務ではなく相互扶助。
(そういうもてなす心が下手な都市農村交流イベントなんかで発揮されて地元が疲れてしまう、というのもありがちな話です。たとえば移住してくるのであればそういう心を一番持っていてもらいたい。)
淡河町木津の風景
カラオケや畑のおかげか、とてもお元気な大正生まれのおばあちゃん。コピーしに来て下さったときに話すぐらいのものですが、また来て下さるのを楽しみにして、後ろ姿(上写真に小さく写っています)をこうやってまた見送るのです。時々元気かなと顔を思い浮かべながら。
たくさんの誰かのことをお元気かなあと思える毎日は豊かなことだと思っています。
神戸市北区山田町の風景

分断に抗う

明後日25日はお隣の三木市吉川町でまちづくり協議会さんの皆様の前で淡河町のこれまでの取り組みとこれからの取り組みについてお話させてもらいにいってきます。
ほんの54年前までこの現在の神戸市北区淡河町と三木市吉川町は同じ美嚢(みのう)郡だったのだ。町や村が合併し、三木市ができて美嚢郡が少しずつ消滅していき、最後に残った吉川町も2005年10月に三木市となり、美嚢郡はついに消滅してしまったのだ。
とはいえ同じ郡であったというだけあって同じ文化圏。生活上の慣習等、たくさんの文化的な共通点がある。文化的連続性がより大きな制度により分断されてしまうのに対してささやかに抗ってみようと思う。

そんなふうにまちづくりのことも多少やるにはやるのですが、基本的には田舎でも世界の先端を見つめながら、朝から晩までデザインのことを考えている所長のやっているデザイン事務所。
もちろんデザインにおいてコミュニケーションは常に意識すべきことなのですが、
この地域のコミュニティだとかはそれほど意識していません。もちろん人との関係性を円滑にするための手法は考えられますが、そういう論理を越えたコミュニティが農村には根付いていて、デザインというものではくくりきれるようなものでもないと感じています。

仕事や学業、結婚などで出て行き、地元の若者たちは減っていると言われるのですが、2、3日前に誘えば集まる若者、これだけいます。
暇なわけじゃなく、遠くにいてもわざわざ帰ってきてくれたり、
他の予定をキャンセルしてくれたり、つながりや信頼関係が強いのです。

というのがこの地域は心配いらないなという変な確信です。
私の世代の1学年が当時で43人。いまどきの中学生なんかは1学年20人程度。
それでもこれだけ集まって、この夏はたくさんのBBQをしました。
事務所でBBQ

いろんな人がやってくるのは。
こいつのせいでもなく、そういうこと。
cottの貼り紙

いや、ずらっと並ぶ酒瓶のせいか。
そういえば昔RPGゲームで酒場で情報をゲットして、モノガタリが進んでくというくだりを思い出した。古来から情報が集まるのはバーなんだな。プリミティブなコミュニケーションの場。BBQができない冬の間に工事をすすめるのだ。

※いつも開けているのはリビングダイニングですので、仕事情報流出等はご安心のほどを。

まちにひらく

cott事務所 まちのリビング
事務所のDKスペースを模様替えしました。
というより朝来たらご近所さんがいて、してくれていました。(ありがとう、Kさん。)

仮設の土間事務所方向に開いていた動線を閉じてよりまちにひらきました。
日々のご縁の中で、人間の信頼関係や動線を少しずつまちにひらいていければ。
農村の建物の良さはひとも空間も含め、まちに拓いていること。
交通や情報、人の対流のダイナミズムが広域に渡るようになってきたのに少子高齢化も手伝い、
近頃はたとえばカーテンをいつも閉めていたり防犯カメラをつけたり施錠する家も多く、農村の空間が閉じてきているのが寂しい。
だけれどそんな良さが農村のおおらかな良さにつながるのだと信じたい。

事務所をあけているときはもちろん事務所の施錠はしていますが、
この部屋は施錠していませんのでご利用はご自由に。
誰かいるときはひとこと声をかけてもらえれば。
来た時よりも、美しく。コーヒーはセルフで。コーヒー代は実費で貯金箱へ。
まちにひらくことは、人を信頼することから。懐は広く。
地域の若者だけでなく、世代間交流が生まれれば。

図面はほぼできているのでそういった動線がある程度根付いてくれば、この部屋の工事から始まる。予定。
工事もひととの関係性の中で少しずつ進めていければと思っているので、予定。
工事完成後の動線を踏まえた模様替えなので、これでいつでも工事にとりかかれます。
所有するのでなく、共有すること。
そのためにある程度の方向性を定めつつも、偶発的な出来事を許容するものをつくっていく。
強要されない、楽しみを発見する術を身につけてもらいたい。
フィールドを楽しみましょう。

そろそろ夜が寒くなってきたのでついに灯油を買いました。
寒いときといえば鍋。
猟師のおっちゃんとぬくぬくと鹿鍋をするのが楽しみだ。
たまたまその日に居合わせたのならぜひご一緒に。
ただのたまり場になっちゃうといけないので告知はしません。
そんな予測不可能な何かが広がっていくことを愛でること。
自然界のうつろい、予測不能性にそのまんま、日々を委ねること。
それが人々に心を開き、まちにひらくこと。

「ここ」で「暮らす」ということ。

撮影前には

前々回(9/28)の記事に載せたイベントDMのメインビジュアル撮影シーンの様子。たまには仕事ぶりを。
撮るものにもよりますが、基本的にはノートパソコンにケーブルを繋いでその場で確認しながら撮影をすすめます。(下の写真は片付け後なので繋がっていませんが。。)
事前に持参したイメージに近づけるためにセッティング。
または、特急制作のときはその場でラフを描いていろいろ動かしてみたりしつつ、イメージのつくりこみ。

その場でやってくれというときは実物を前にしていて、すぐにクライアントさんの確認をとれるので考えやすいのですが、臨機応変に対応しなければならない分、とりあえず車に積んでおく機材量が多くて大変。
撮影
cottの出張撮影機材
何をどんなふうに撮りたいかによって機材量が大きく変わります。
ですので、特急制作のときはできるだけイメージをふくらませてからご相談いただければ嬉しいです。特急でない時、つまり通常はまず撮りたい絵を事前に打ち合わせて明確にしてからの撮影ですのでまずご相談というかたちでOKです。制作クオリティのことを考えるとできれば特急ということでもそのようにしたいのですが、状況によって融通は効かせています。

出張だけでなく、事務所のほうの広い納屋がひととおり片付いたので、ちょっとした記念写真やプロフィール写真などにご利用いただける簡易の写真スタジオもしています。※当面は高度なライティングのモノ、人などには未対応です。
cott簡易スタジオ

とはいえ、一歩外に出るだけで抜群のロケーションなので、外での撮影こそオススメ。

Autumn in Japan

淡河八幡祭り
淡河八幡祭り
淡河八幡祭り
淡河八幡祭り
天高く馬肥ゆる秋は、
鬼の恐さを知りつつ、共に収穫を喜ぶのだ

そして次の日には皆の肩が悲鳴をあげる。それも一つの一体感。

澄んだ空気に突き抜けるようなあおいそら。漂ってくるキンモクセイのにおい。
連休明けの今朝の事務所は清々しい。

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