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2007-08

エーテル

甘い蜜の香りに誘われて窓の向こうの森の中に迷い込んだ
きみはとりつかれたように闇の奥へと消えていった
ぼくはきみを見失った

太陽の下にいるときはこの影が僕から離れることがないのと同じように
ぼくは全てのものと離れられなかった
離れようと思っていること自体が
離れられない何よりの証拠だった
それはまた 時は止められないことをも示していた

きみをこの視界から見失ってから、どうしようもないぐらいに迷っていた
いつの間にか光を失っていた
必死に光を探した
どんなに探しても見当たらなかった
ある時 光を探すのをやめて 静かに目を閉じた
それは僕なりの死ぬ覚悟だったのかもしれない

そうすれば、真っ暗闇の中でも進んで行けるようになっていた
毎日は果てしない旅の道中にあった
迷っているかいないかを決めるのは自分だった
もう光を見失わなかった

ぼくはときおりこうやって言葉を吐き出す
そうしないと今にも何かに潰されてしまいそうでこわくて
その何かが何なのかを表す言葉をぼくは知らない
だがその何かは確実に存在した
それはいろもかたちもなくて
この世をつなぎとめる
まるでエーテルのような存在
なんとなくだけれどそれがなくなってしまえばぼく昔憎んでいたそれもなくなってしまう
なんだかんだでぼくにはその目に見えない何かが必要だった

STARS

そーいや、しばらく前やけど流れ星を見た。
友人に流星群が来ていることを電話で聞いたので
作業を一旦中断して午前3時ぐらいやったかな
ひとり、学校の一番暗そうな場所を探して
階段に寝転んでぼんやりとしばらく佇んでいた
それでも照明が明るくて見えへんのやろなーと思いきや、
かなり明るく輝く光の筋が空を舞った。
それから身構えて空を見上げたんやけど、そのとき見えたのはそのたった一度きりだった。

こんなにも遠くはなれたところにあんなにも明るく輝く光が届くなんて。
そして何より感動が届くなんて。
結局一度しか見られなかったけど、その一度で十分だった。

きっと流星群ってぐらいやから、ほんまにいっぱいの星が流れとって、
そのごく一部のとびっきり明るいのんか、地球に近いのが俺の目に届いてて、
しかもそれは何年も前の光で。

星って見逃してたり見えなかったりすることが山ほどあって、
それはきっと俺らの日常と一緒でなんだか素敵ねんよな。

その見逃しているものが少しずつ見えるようになってきたら
とてもやさしい気持ちになれそう。
目先のことばっかにイライラせず、
今対峙している目先のことを大切にして。

これからもがんばろう。
星はいろんなことを教えてくれた

_______________________________________________
コインランドリーでひととおりの仕事を終えたきみは椅子に置いてあった文庫本を読みだした
そこで営まれる日常はなぜかとてもドラマチックで
とてもうらやましかった
子供と遊ぶきみの目はいつも輝いていて
その瞳の先にあるのが僕だったらなと
ちっちゃな子供に情けないけど嫉妬してたことを思い出すよ

きみは時々くすんだ瞳をした
そのくすんだひとみには何が映るのか知りたくてのぞきこんだら
きみはいぶかしげな顔をして
ふと思い出したように
ぼくらがつくりだした幻の中に
真実があってもいいと言った
会話は ただそれだけだった

ある日 夢を見た
なぜだか現実にあった出来事のようにリアルで
いまでも何だか心の中でふわふわと浮いているかのような感覚がした。
いつ止むともしれない雨のなかに佇むきみはなぜかとてもまぶしくみえて
眠れない夜にはいつもなぜだかそんな光景が瞼の裏を横切ってく
雨のしずくが木々をゆらすそのリズムが耳の奥の方からきこえてくる

そんなとき僕は少年時代によく登った山へいき
一風変わったマスターベーションをする
だれもいない山の峠にある滝の中で何も纏わないで水に体を預けて
混沌と静寂の中で
宇宙と交信するんだ

雨が降り出しても何も気にならなかった
数時間ものあいだ
雨に打たれていた
どれくらいの時が経ったんだろう

ぼくは井の中の蛙だった
どこまでも深い意識の奥底に閉じこめたまま深い記憶の海の大海原で ただただ流されていた。

ある日 私は目覚めた
秩序立った世界からふらりと抜け出して いつの間にか自由を手にしていた。
赤ん坊が初めて目を見開いてこの世界の空間の広がりを知るときのそれとは違って、まるで食わず嫌いの椎茸がいつの間にか毎日口にしても苦じゃなくなっているみたいに。
つまりはある日突然じゃないもので、
もしかしたら自分を掘り起こす過程の中で自分の中にある無意識が意識化していたのかもしれないし、あるいはその逆で、
意識が無意識化して意識がシンプルになって、意識を惑わすものがなくなったからよく見えるようになったのかもしれない。

いずれにせよ、私はここに立っていた。

全てのものを軽蔑していた
ある日その全てを見たいと思った
全てを見ずして軽蔑など人間の権利にはありえなかった
私は神でないことを知っていた
全てを見ようと動いた
見ようとすればするほどそれは増幅していった
どんなに見ようとしても小さな人間には不可能であることを悟った
全ての存在を否定できなかった
肯定するしかなかった

いつのまにか昔軽蔑してばかりだった全てを愛するようになっていた
認めることで初めて愛することを知った

なにしたってこの身滅ぶときに世界は思った以上にかわらない
だったらおもいっきり叫んでやるんだ
もう止まらない
この想い 誰にもとめさせない
時は止まらないし止めさせやしない

未来はいまこの手のなかに
ぎゅっとこころで握りしめて
もう離さない

この宝石箱だけはこの身が滅びようとも渡さない

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