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2018-07
Fantasy
- 2018-07-31 (火)
- Way of Working -cottのお仕事-
いつでもどこでも仕事ができるという幻想
いつでもどこでも仕事ができるよねというのは自分にとってはまだ幻想である。1年間海外ノマドをしておいていきなり何を言うのかと思うかもしれないが、今回のそれは10年間、神戸という拠点に根ざしcottとしてデザインの仕事を続けてこなければ、成し得なかったものだ。海外で何の仕事をしていたかと言うと、「アレをいつものアノ感じで頼みます」というので通じてしまうような、もはや顔を合わせずやれてしまう定期的案件がほとんどである。(正確に言えば、現地に納品する新しい案件などもしていたのだが、それは少なくイレギュラーなのでとりあえず数えないでおく。)直接顔を合わせずに新規案件を受けると満足に仕事を遂行できない恐れがあると考え、すべての新規案件は断ると予告し、話が来ても断った。そうすることでその他の時間を目一杯デザイン行脚にあてることができた。つまり自分がノマドスタイルで仕事をできたのはクライアントのおかげであり積み重ねてきた信頼関係があってこそだった。
定期の仕事とはいえ成果品の納品以外にサポートは必要なので、体制を整備しておき、仕事時間にしている日本時間の平日9時から18時の間は事務所の電話にかけても携帯電話にかけても誰かが出られるようにしたし、ファックスもe-Mailで届くようにした。仕事量は日本で通常営業している時の半分ほどだっただろうか。もし頼まれたことをこなしてお金を稼ぐことが仕事であると言うのなら、いつでもどこでも仕事をするということは実現したと言って良いだろう。収入面でも少なくとも、ノマドワークでよくイメージされるクラウドソーシングによる仕事やバスキングなどに比べて十分稼いだだろうと思う。ただ、自分にとってはこれでは仕事をしているとは言いがたかった。なぜなら自分にとっての仕事はそれだけのものではないからだ。自分の仕事の一番の喜びは、クライアントと膝を突き合わせてああでもないこうでもないというプロセスを踏みながら、新しいかたちや、関係性を生み出していくことにあり、それが欠けているのであれば仕事と呼ぶのに不十分だった。(もちろん定期案件にその要素が無いわけではく、定期案件だから面白くないというわけでない。ただ、膝を突き合わせる場面は新規案件に比べて減る傾向がある。)そのプロセスを外注すれば新たな案件自体をこなしていくことはできるのだが、そこは外注してしまえば自分にとっては仕事でなくなってしまう。そのように、自分にとっては「いつでもどこでもお金を稼ぐ」は実現できるが「いつでもどこでも仕事をする」は幻想だったのだ。
拠点があると出会いが増え、楽しくなる
帰ってきて半年以上が経ち、ようやく新しいプロジェクトが増えてきて実感しているのは、特定の場所に自分がいるということの大切さだ。よく考えてみると仕事中誰とも顔を合わせず会話をしない日はほどんどない。たとえ1日デスクワークをしている日だとしても、たまたまコンビニで知り合いと出会ったり、電話で連絡事項を伝えると、たまたま近くにいるからと寄って下さったりと、案外いろいろあるものだ。たまたま街中で出会うことだったり、プロジェクトで直接顔を合わせることだったり、食事ついでに仕事の相談をすることだったりが仕事に繋がったりと、日常を暮らす中での偶発的なコミュニケーションもとても重要なのだ。ノマドワーク中もそういう出会いはあるが、いつもの日本のチームと仕事をしている限り、ほとんどの偶発的な出会いは仕事に繋がらない。知り合いがいない街で仕事をするためには、よっぽど自分を売り込まないといけないが、それにはその街でやるんだという意思と相応の労力が必要で、偶発的とは言いがたいしそもそもノマド的なスタイルから少し離れる。拠点があると、売り込みをせずともいい仕事をするとそれがまた繋がりやすい。そしてそういう出会いがまた仕事を面白くしていく。古くさいかもしれないが、仕事は人と一緒に、人のためにするもので直接顔を合わせることはとても大事というか、好きなのだ。
ぐるっと回って行き着いた理想の創作環境
ただ、新たなインプットをやめるつもりはない。新しいものを作る冒険をするために、新しいものに直接触れる冒険をするのだ。拠点ありきで、期間をしぼったノマド。自分の中での理想的な創作環境はそういう感じだなと、わざわざ文字にしなくても当たり前のようにみんながやっていることかもしれところに、ぐるっと回って行き着いた。
この時期、明るい時間に帰れたなら、
ちょっと進路変更して農道を経由する。
この写真の撮影場所の字は空山と言うが、名付け親を讃えたくなる。
ぐるっと回ることは好きだ。
たとえ同じ結論に行き着いたとしても、そっちの方が楽しいのだ。
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Fate
- 2018-07-02 (月)
- Tweets -はてしないたわごと-
ブエノスアイレスの日曜市で買ってきた腕時計が止まったので電池交換をした。電池式の時計は電池が切れると街の便利屋さんに行って交換してもらうのが面倒でいつも放置してしまいがちだったが、お気に入りだったのでわざわざ工具を買って、ついでに棚の肥やしとなっていた時計もまとめて電池を入れ替えた。工具が手元にあれば放置もしなくなるだろう。
その時計は洗練されたデザインであるわけではないし安物だけれど、手作りでお気に入り。赤は好きではないのでいつもは赤を選ぶことはないのだが、そのときに気に入ったデザインのベルトはなぜか赤色で、気に入ったデザインの文字盤と付け替えてもらった。そこでしか手に入れられなかったものをそこでしか出会えなかった人から相談しながら買ったため愛着を感じている。
お気に入りの腕時計を身に着け始めて、時間を見るために手首をちらっと見る行為に比べると、ポケットをごそごそしていた自分の行為をださかったなと思い、手を洗うときにはわざわざ時計を外す仕草すらもいいなと思いはじめた。偶然の出会いがそう思わせてくれたのだと思ったらなんだか素敵な気がする。その出会いがその人の日々の中に溶け込むだけでなく、思想の中に入り込んでいって未来を少しだけ変えたかもしれないのだ。もちろん時代を越えて引き継がれるデザインが優れたプロダクトも好きなのだが、そうやって手にしたものを結局長く大事に使っている。
これも縁だな。最近はそういう道を選んでいる。
自分も時代も、消費の仕方が大きく変わったものだと実感する。
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