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茅葺きライブと陰翳礼讃

神戸市北区には約750棟の茅葺き民家が現存している。(平成20年)
現在、茅葺き屋根とふれあう月間と題して北区が主体となって各種イベントを週末に開催している。
去る11月7日、箱木家住宅で音楽ライブが行われた。
箱木家住宅は通称箱木千年家と呼ばれ、日本最古と推定される茅葺き民家で1967年に国指定重要文化財とされた。

箱木家住宅
詳しい解説は上記リンクよりwikipediaさんにお願いするとして、今回のイベントはその40年以上も大事に大事に保存されてきた茅葺き民家で初の大きな試みとなる。
茅葺きといえば、昔なつかしいという郷愁的なイメージがつきまとい、どうしても現代では保存する以外にこれからの道の見えにくい業である。職人の業としては伊勢神宮をはじめ、多くの文化財がある限りこれからも在り続けるだろうが、住民の業として復活することは難しいし、無理にしなくてよいと思う。
そう考えると、これからの茅葺きはどうあるべきか。
その方向を今回のイベントで初めて公に指し示された気がする。

囲炉裏に炭をくべて千年家を支える大きな梁たちに再び煙のにおいを嗅がせたかったが、文化財のため火を使うことはできない。囲炉裏なのに…。ということで音楽で空間に求心力を与え、火を灯す。
箱木千年家ライブコンサート
「BACHIKONDOOO」の太鼓からはじまり、「slow cafe」、「イーリャ・ダスタルーガス」と続く。
始まりは明るかったが、徐々に山のシルエットが闇に沈んでくる。
千年家の土壁に踊っている影が、千年家の喜びを表現しているかのように見えた。
箱家千年家に映るシルエット
山が闇に沈みきったところで寒空の下、おにぎりと味噌汁をいただき、室内で後半の演奏が始まる。
母となった淡河の歌姫「むぎ」の包み込まれるような歌声から「estinto…」のアンビエントミュージック。ハン(中華鍋を2つを逆さにしてくっつけたような楽器)を手で叩いて繰り出されるアナログなメロディーの反復が丹生山にこだまする。

箱木千年家ライブコンサートに向けた「淡河かやぶき屋根保存会くさかんむり」によるコメント
箱木家住宅屋内ライブ
箱木家住宅のライトアップ

ライトアップは控えめに。

茅葺き屋根をライトアップするのは確かに綺麗で、とても味があっていい。だけどそこら中の茅葺き屋根をライトアップしてルミナリエや紅葉時期の京都の寺院、そして観光地として有名な白川郷のようにしてしまうのは少し違う。入り口としてはそういうこともいいのだが、綺麗だな、というだけではテーマパークと考え方が同じで、文化財をただかたちとして保存しているのみのことと何も変わらない。

日本の文化といえば陰を楽しむように形成されている。これが日本特有の奥ゆかしさとか間という表現になるのだろうか。例えばそれは家の造りなどにも現れていて、塀、庭の植栽、軒、縁側、障子、奥の部屋と奥へ行くに従って徐々に光を落としていくように家ができている。

このような日本の空間、そして文化の特質を巧みに表現したと言われている文献として谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』が有名である。西洋では可能な限り部屋明るくし、陰翳を消す事に執着したが、 日本ではむしろ陰翳を認め、それを利用する事で陰翳の中でこそ生える芸術を作り上げたのであり、それこそが日本古来の芸術の特徴だと主張する。こうした主張のもと、建築、照明、紙、食器、食べ物、化粧、能や歌舞伎の衣装など、多岐にわたって陰翳の考察がなされている。

建築に興味があろうとなかろうと、現代において日本の文化を考える際には外せない一冊である。日本人なら読むべき著作ベスト5に入ろうか。もう一度、読み直そうと思う。

かたちを残すことのみにとらわれて、思想を置き忘れてはならない。

少し話がそれたが、民家というのは住まい方とその中にある思想も含めて保存されるべきもので、その住まい手が不在であると本当の意味での民家の良さというのは伝わらない。

高度経済成長期から農村地の文明開化もはじまり、農村地域のシンプルであるけれどもその中にどこまでも豊かさを含んだ生活美は崩れ去っていく。
安価で身近に手に入る材料で環境を作り出す。もともとそうしていたところに美しさがあったのだが、今や、農村地において安価で身近というのは自然素材よりもどうしても大量生産される工業製品の方に分がある。

別にソレをむやみに否定して昔に戻ろうと言うつもりはないが、大切なものを置き忘れてないか、こういったイベントや古民家を通してそういったことをもう一度考え直してみたいものである。

北区淡河町は十場家の陶芸教室も盛況のうち終わったので次は11月27日。神戸市北区は長尾町、一級建築士の赤井さん宅、神戸市登録有形文化財「赤井家住宅」にてクラッシックコンサート。申込み締め切りは11月19日。その次は12/4日花山中尾台にて茅刈り。その次の日は茅葺き体験会 カヤコヤ@神戸・淡河が12月5日(雨天順延12日)。昨年の様子
くわしくは、北区のウェブサイトにて。

これから神戸の茅葺きの動きにご注目を。

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