Tip77: 浄化槽を設置する

浄化槽とは何か?

我が家は公共下水道が通っていない田舎なので、トイレを使うために浄化槽が必要になる。浄化槽とは家庭から出る排水を放流できるように微生物の力で浄化するためのもので、言わば、我が家の下水処理場だ。ただ、都会の家にはほとんどそれはついておらず、排水は公共下水道を通って下水処理場でまとめて処理される。そのため、浄化槽と言われてイメージが湧く人は少ないかもしれない。私自身、建築士の免許を持っているにも関わらず、浄化槽のある家で暮らすまではそれをきちんとイメージできていなかった。通常は土の中に埋まっていてただのマンホールの蓋が地上に見えているだけなので意識できないのも無理はない。だが、流す水が綺麗になる原理や流れる先について知ることは、流れる水を井戸から汲む暮らしをしているならとても大切な事だ。浄化槽暮らしは面倒な部分もあるが、流す水を意識するようになり、トイレットペーパー以外のものをトイレに絶対流さないようになるだろう。

浄化槽を取り付ける

ここでいつものように浄化槽を設置する手順を追って説明したいところだが、これを自分でDIYすることは実はほぼ不可能だ。浄化槽は大きな穴を掘って基礎を作り、買った浄化槽を据えて配管して埋め戻すだけなので技術的には不可能ではないが、浄化槽を据えるためには浄化槽設備士という国家資格が必要なのと、大抵全国どこでも浄化槽を設置する補助金があるために資格があったとしても自分で据える方が費用がかかることも多いためだ。建築士を取り、電気工事が必要なら電気工事士を取った自分なら資格から取得ということも頭をよぎったが、プロを雇って仕事をしてもらえる上に安いとなれば、流石に頼むことにした。自分で据えてはいないが、職人さんに動いてもらいやすいように同時に作業を追っていったのでこれもTipsに入れさせてもらおう。

まずは単独浄化槽を撤去してもらった。昔の家に付いていたのは単独浄化槽と言って、トイレの排水のみを浄化するもので、他の洗剤を含んだ水などは垂れ流しになる。もしその設置場所が川に近い場所であればその流した水が川に流れ、いずれは海へ行くので、言わば、川で洗濯や食器洗いをしているようなものだ。そのために現在は設置が禁止され、単独浄化槽から合併浄化槽への転換が推奨されていて、そのために補助制度が整備されている。今回は撤去に対する費用と設置とそれに伴う配管に対する費用が補助してもらえ、工事費の1/3程度の自己負担で済んだ。浄化槽は撤去してもらいやすいように事前でこちらでだいたい掘っておいた。

次に、穴を掘って土留めをし、採石を入れて底面を転圧。その後、浄化槽の底盤を水平に据え、浄化槽本体を据えてもらう。

その工事が終わるまでに建物の中のから外へ出る排水管が動かないよう、しっかりと1/50で勾配を調整し、まわりにコンクリートを流し込んで固定しておいた。既存の排水管は基礎のコア抜きをして通してあったが、そうすると配管の土かぶりがほとんどとれないし、給水管が排水管の下になる部分もあり上水の汚染の恐れがあるため、基礎のフーチング下を通すことにした。浄化槽の天端が地面より低くなってしまうが、浄化槽を嵩上げする蓋を取り付けて調整してもらえば良い。屋外配管も1/50勾配となるような高さを図面で割り出し、レベラーで調整した。手洗い下からはVP40、便所下からはVP75、風呂からはVP50、洗濯機台所からはVP50のパイプをそれぞれ屋内から屋外へ出しておいた。

また、見積もりでは屋外の地盤が岩盤で機械も入れないことを想定していなかったということで、浄化槽を据えてもらっている間に配管経路の岩盤を自分たちで荒く掘削しておいた。ここから浄化槽までVU100の屋外配管が通る。パイプの合流部と屈曲部には点検ができるよう、必ず桝が入る。

あとの屋外配管はプロに作業をバトンタッチ。風呂は浴槽下の排水管にトラップを作らない計画なのでトラップ桝にしてもらった。すると、通気弁まで取り付けてくれた。通気弁があると計画変更でトラップを作って二重トラップになったとしてもOKなので大変ありがたい。キッチンの配管は大きなゴミを取れるようにクリーン桝に。

土を埋め戻して浄化槽蓋のまわりに配筋し、コンクリートを打設すると完成。ついでだと言って型枠だけを組んで放置していた給湯器やブロワを置く台も一緒に打設して下さった職人さんたちには感謝しか無い。

浄化槽の仕組み

家庭で一般に使われている嫌気ろ床接触ばっ気方式の合併浄化槽は汚水はまず嫌気ろ床槽で空気がなくても生きられる嫌気性微生物に働いてもらい、次に行く接触ばっ気槽で酸素を好む微生物に働いてもらい、次の沈殿槽の上澄み液だけが消毒されて放流されるようになっている。その放流水は飲んでも大丈夫なほどらしい。浄化槽はただ汚水を貯めているだけで浄化できる訳でなく、電気が必要だ。酸素を好む微生物に働いてもらうためにブロアがつながっていて、電気の力で24時間空気を送っている。

ただ、ブロアも実際は24時間稼働させると酸素が過剰すぎる状態であることが多いらしく、使用状況や浄化槽の仕様にもよるが、1/3〜1/4程度の運転で良いらしい。そこで、タイマーコンセントを取り付け、1時間運転、2時間休みという方式にし、水質の変化を見ながら運用していくことにした。これはブロアの電気代の節約にもなり、48Wのものを1年間動かし続けると0.048(kW)x24(h)x365(日)x32.83(円/kWh)=11,982.95円、毎月1,000円ほどかかるのが1/3になるのは結構大きい。

ついでに金額の話をすると、浄化槽は据えてしまえば下水道利用料金がかからないから安価と思うかもしれない。しかし、微生物の力で汚水を浄化するためには、良好な状態で運用できないと意味が無いので、浄化槽法により年1回以上の汲み取りと年4回の点検が義務づけられており、維持費は公共下水道が通っている場所とあまり変わらない。神戸市のときは年4回だったのだが、岡山県では年12回の点検が義務づけられていて、設置で数十万負担する事を考えると浄化槽の方がむしろ高いだろう。だが、山を流れる水をくみ、それで様々な物を洗って衛生的に暮らし、排水を浄化して流す、敷地内で循環する仕組みを手に入れたことは、自分の中ではそれ以上に価値がある。

トイレが高めるQOL

トイレは言わずもがな現代人の暮らしの中で大切な場所で、トイレがいつでも使えない暮らしをしている時と比べ、かなりのQOLの向上になったと実感している。もし腹痛になったらいつでも駆け込む事が出来る清潔で快適な空間があるということが日々の暮らしの中の心理に与える安心感はとても大きい。トイレは小さな空間だが、Tip75: 戸をつくるTip74: 壁を立てるTip73: 床を組むTip64: アースをとるTip39: 換気扇をつけるTip25: 照明を付けるTip24: コンセントをつけるTip17: 給水管を通すTip11: 排水管を通すなどこれまでに使った多くの業を使った。トイレが自分で出来ればあとは積み重ねで家ができるだろう。

ひょんなご縁から理想的な環境の古民家に出会ったデザイナーが、その日々の中で身につけた業を、日々の暮らしとともにアーカイブして行くウェブサイト。100の業が溜まったら、cotocotoというタイトルで誌面化予定。

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2021年3月から岡山県加賀郡吉備中央町の山林を譲り受け、セルフビルドで改修中。見学お手伝いは大歓迎!詳細は078-220-7211 (cott)またはこのメールフォームにてご連絡下さい。

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