Tip74: 壁を立てる

壁は内と外を区切り、安心して過ごせる内部を作る大事な要素だ。外敵から身を守り、音や視界を遮断し、プライバシーを確保する他、内部空間に空気的に快適な領域を作り出すことで暮らしの質(QOL)を高める。これほどまでにQOLに直接関わってくるものが他にあるだろうか。壁がつくれると、どこでも豊かに暮らしを生み出せるように思う。

木造の壁をつくろう

壁はキャンプのテントの布かもしれないし、石を積んだ城壁かもしれないし、イノシシよけの柵かもしれないが、現代の人間が暮らす中で最も身近な壁が家の木造の壁だ。

木造の場合、土台の上に間柱を1尺5寸(455mm)または1尺(303mm)間隔程度に立て、その両側にパネルをサンドイッチして壁になる。間柱は新築では工場で土台と梁に切り欠きが入れられており、そこにちょうどはまるようになっている。リフォームでも同じようにすると材のひねりなどを修正できるし釘も打ちやすいので同じようにした。

内外を分ける壁には断熱材を入れ、胴縁を打つ。胴縁がなくても壁はできるが、リフォームなどで既存の柱が曲がっていても立ちを直して真っすぐな壁にできたり、電気の配線などを通したりしやすい。通気を確保して壁の中の湿気を逃がすために設けられたりすることもある。胴縁は1尺間隔などで配置し、各間柱に2本釘止めで止める。ビスの場合は、最端部は割れてしまいやすいので下穴を開けて止める。

通常、床と壁の境目には幅木、天井と壁の境目には廻り縁という材を取り付けて隙間が空かないようにするのだが、今回はシンプルなデザインにするために廻り縁がなく、幅木の見えない壁とした。幅木には見切りとして使われる以外に掃除機などによって壁を汚さないという役目があり、幅木は欲しい。そこで、ほとんど見えないように13mmのアルミのLアングルを金属用ボンドで胴縁に貼付けていった。

その上に12.5mmの石膏ボードを張り、引き戸があたる壁には合板を張った。戸はゆっくり閉まるような金具を使うので戸当たりはなくても戸があたる箇所の裏に補強がされていて下地が合板なら大丈夫そうだ。何なら石膏ボードでも大丈夫そうだが、戸に鍵を取り付けるため、それは避けた。

スイッチやコンセントなど、壁の中に配線を通す場合は先に壁裏位置まで通しておく。ボードは表から何度もカッターを入れ、折り、裏からカッターを入れ、断面をボードやすりで整え、ボード同士の継ぎ目になる箇所はボードカンナで斜めにカットする。以前は丸鋸でボードの裏から切った方が綺麗に切れると思っていたが粉塵がすごいし、慣れるとカッターでも十分綺麗に切れるのでカッター派になった。カッターの刃はどんどん折り、定規がずれないようにクランプで固定するときれいにできる。1mの定規と2mの定規、1mの丸鋸用Lアングルが重宝する。

このままだとボードとボードの継ぎ目とビス穴が目立つため、その継ぎ目を埋めるためのパテを塗る。パテ処理を行うことで、ボードの継ぎ目が消え、一枚の大きな壁になる。まずはパテをのせるためのコテ板をそこらに落ちている廃材で適当に作った。取手は角材をコの字形に切り出し、カッターで丸く削っていくと味のあるものになったので案外お気に入りになった。その上でパテに水を入れて混ぜる。最初は何年か前に使ったパテを使ったのだが、いくら混ぜてもダマがなくならず、パテを壁に塗る時にそのダマが壁を引っ掻いて筋が付いてしまう。古いパテは捨てた方が良さそうだ。どこのホームセンターにも置いてある最初から混ざっている補修用パテは高いがとても使い勝手が良いので小面積のときはオススメ。

パテは乾くとやせてくるので、3度塗りとした。塗りたくない天井などのマスキングや床の養生も忘れずに。最初はボード同士の継ぎ目とビス頭の溝だけを埋めるように。各凹んだ箇所にヘラで練り込んで掻き取るという動作を行っていく。その後、ボード同士の継ぎ目にファイバーテープを貼り、ひび割れ防止。出隅にはコーナーテープを貼り、補強を行う。次にテープが見えなくなるようにパテを幅広く塗る。乾燥後、段差ができているところは適宜やすりがけを行い、仕上はさらに幅広く。合板下地の箇所は木の繊維の段差が出ないよう、全面にパテをしごいた。簡単そうに見えてとても難しいのがこのパテ塗りという作業だが、段差があれば仕上がりにも段差ができ、仕上がりに直結してくる大事な作業なので丁寧に行う。必要な分だけを練り、必要な分だけをヘラに取って作業を進めるのがコツ。ヘラも240mmと210mm幅の大きなものを新調したが、大きいヘラがあるととても綺麗に仕上がった。

仕上げはペンキ塗りとし、ローラーで二回塗った。マスキングをした隅っこから先に塗って、広い面を塗って仕上げると綺麗にいく。

正面の壁が合板下地で左右の壁が石膏ボード下地。違和感無く仕上がった。

ひょんなご縁から理想的な環境の古民家に出会ったデザイナーが、その日々の中で身につけた業を、日々の暮らしとともにアーカイブして行くウェブサイト。100の業が溜まったら、cotocotoというタイトルで誌面化予定。

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