昨今は古民家リフォームで天井をぶち壊して空間を広く見せたり大きな梁を見せたりすることが流行っていて、天井が蔑ろにされがちに思う。そんな天井にも意味があるのでとりあえずかっこいいからと天井をぶち抜く前にそのデメリットを知っておく方が良いと思う。
オシャレは我慢
私も実際に茅葺き屋根の古民家の土間の天井をぶち抜いてその下を仕事場にしたことがある。大きな梁が見えて風がよく抜けるかっこ良い空間だった。しかし、冬は当然寒く、さらに煤やゴミがたくさん落ちてきてしばしば仕事の紙が汚れてしまったことも思い出す。基本白い紙で仕事をすることが多いグラフィックデザイナーの仕事場としてはいまいちだった。かっこ良いが寒くて使いにくい、まさにオシャレは我慢をしていた。当時は若さでなんとかなったが、もう少し快適な空間が良いと今は思う。
天井のない夏
あるときは天井のない土蔵の2階を仕事場にしたこともあった。大きな梁もダイナミックで露出している配線もワイルドで良い。しかし天井がないので瓦屋根が蓄えた熱が屋根裏に降りてきて、夏はとにかく暑かった。
天井の役割
このように、天井は快適な暮らしに寄与してくれる大事な要素なのだ。以下に役割を3点まとめておく。
- 温熱環境の調整 – 空間のサイズを小さくして空調をききやすくしたり、天井裏を排気ができるよう適切に作ることで室内の温熱環境をコントロール
- チリや埃を遮断
- 配線や配管を隠す – 余計なものを排除したシンプルな空間づくり
天井を張ってみる
まずは天井下地を組んでいく。天井下地は303mm間隔程度で野縁という部材を並べ、直行方向に野縁受けという材を流し、梁などから90cm間隔程度で吊る。Tip73: 床を組むで床の束を90cm間隔程度で立てたのと同じことで、吊ってやらないとたわむのだ。我が家は梁が鉄骨なので上階のスラブにCTアンカーというアンカーを打って吊った。寸切りボルトを適当な長さで切り、スラブに打ち込んだアンカーにねじこみ、いらない木片をボルトでスラブに固定。そこから吊り木で野縁受けと連結。
あとは壁と同じようにボードを切ってビスで止めると良いので単純な作業だ。しかし、全ての作業が上を向いて行わないといけないため、壁よりも難易度が高い。天井によく使う9.5mm厚の石膏ボードで11kgあり、ボードを頭上に持ったまま梯子に上り、頭上の張る位置に押し当て、片手にドリルを持ってビスをドリルの先をセットし打っていくことになる。大工さんが使うビス打ち機でもあればいくらか楽だが、素人には贅沢品なのでドリルで石膏ボード専用ビスを地道に止めていくことになるだろう。この体勢からドリルにビスをセットし、固定していくのはもはや曲芸に近いレベルかもしれない。
作業を二人でできれば難易度はぐっと下がるが、そうもいかない時は、つっかえ棒に手伝ってもらう。棒は床から天井の仕上がり高さよりも微妙に長くなるように適当な端材を切ってつくる。えいやと気合いを入れて頭上に持ち上げたボードを押し上げたらすぐ近くに準備していた棒を立てて支えてもらう。あとは位置を微調整してビスを打っていくだけだが、3×6尺のボード一枚を張るのに上を向いて40〜50本ほどビスを打つことになるのでなかなかしんどい。ボードを止めるビスピッチは150mm程度間隔にした。
天井に電気配線を這わせて照明、天井点検口、換気扇を取り付けたらTip74: 壁を立てるのときと同じようにパテ処理をし、塗装をして完成。
良いデザインは機能も形も両立する
天井の良いところを挙げて天井を作る記事を書いたが、快適になるからなるべく天井を作ろうということではない。デザイン上は天井のない開放的な空間を作りながらも工夫次第では快適な空間にすることもできる。そのために天井がどのように快適な環境を生み出しているのか、仕組みを理解していることが必要で、それを理解するとどのような工夫をすれば天井と同じような効果を想定できるのか考えることができるだろう。形状と機能のどちらも良いものをつくっていきたい。