床を考える
床は住宅を定義する上で屋根の次に重要な要素だ。平らな床がないと落ち着いて眠る事も出来ない。平らだと水平移動するときに位置エネルギーが同じであまり力を使わないで移動する事ができ、ストレスがなく快適に暮らすことができる。
現代では床の位置は地面より少し高くなっている。竪穴住居は床が地面だったが、床が地面のままだと寝ている間に虫などに襲われるかもしれないから、より高いところに床を組んでより快適に暮らすようになった。そうすることで、さらに湿気や虫から家を守り、より長持ちする家にもなる。
とても快適だと感覚で知っているからか、多くの人は初めて床を張ったら早速そこで寝転びたくなるに違いない。
床を組む手順
まずは90mm角程度の大引という部材を900mm間隔程度に設置する。大引は基礎の上に置いた土台に力をダイレクトに伝える役目を果たす。大引の下には900mm程度の間隔で床束を立てて大引がたわまないようにする。床束は昔は木で造作していたが、近年はホームセンターに売っている鋼製束かプラ束を使う事が多く、それらは高さをネジで微調整できるのでとても便利だ。木だと経年とともに浮いてしまって役目を果たさなくなっている事も多いが、ねじならメンテナンスも簡単だ。
次に、それと直交する方向に45mm角程度の根太を1尺(303mm)間隔ごとに並べていく。こういう下地が曲がっていると、仕上がりも曲がってしまうので、ここでしっかりまっすぐ整っている事を確認する事が大事だ。微妙に高ければかんなで削り、低ければ適当な木片をかませる。DIYの場合は安い水平器や水盛りを使っても良いのだが、現代にはレーザー水準器というとても便利な物ができており、仕事も早く、正確になるので手に入れるのも良いと思う。高い物だと10万円を越えてくるが、最もシンプルな水平と垂直が見られるものであれば1万円強で手に入り、それだけでも相当仕事が楽になる。(安い方で十分革新的で長い間愛用したが、全面リフォームになると高精度で高機能な方が仕事が早く確実になるので結局高い方も買った。両方を買っても安い方にも出番はあるのでどちらを買っても損はないだろう。)
次は根太と根太の間に断熱材を入れる。断熱材は余っていた50mmのスタイロフォームを使った。(1尺間隔ごとに入れていく「フクフォーム」という商品がホームセンターに売っていてそちらの方が仕事がしやすかったのでメインはそちらを使った。)断熱材はカッターで簡単に切れるが、カッターは刃が短く、垂直に切るのが非常に難しいので丸鋸を使う方が早く正確だ。断熱材を入れたらほぼ床のように感じるので根太の上をひょいひょいと歩きたくなるが、断熱材を踏み抜いて落ちて痛いわ断熱材が割れるわで苦い思いをしている人を見た事があるので、合板を張る前は要注意。
最後に木と断熱材の間を気密テープでしっかりと接着するか、フィルムを全面に張るなどして床下の気流が室内に上がらないようにすることも大切だ。壁の中にも気流が上がらないようにして床下の空気は床下のみを通り抜けるようにしておくこと。この作業を怠って組んだ床の上で冬を迎えたことがあるが、ほんの小さな隙間だったとしても手を近づけるとしっかりと風を感じるほどの冷気が床下の隙間から吹き続けていた。柱部分や配管で床を貫通する部分等も忘れずにしっかりと周りを防湿テープや発泡ウレタンスプレー、コーキング等で防ぐ。間仕切り壁を作るときはその箇所も含め床下地の合板を先に張ってしまうと気流止め対策には良い。
断熱材の後は根太と直交する方向に捨て床として千鳥状に12mm厚の構造用合板に15cm間隔で大量のビスを打っていく。最後に同じ方向にフローリングの床材を敷いて仕上げる。床下点検口を開けるのも忘れずに。剛床というが、根太を省略して24mm厚の構造用合板を大引の上にそのまま張るのも最近はよく行われている。
仕上げ床は倉庫一掃品の無垢の樺桜のユニフローリングで源平、節あり、ウレタンクリア塗装90mm幅15mm厚のもの。フロアタッカーがあれば3倍くらいのスピードで仕事ができて良いのだが、コンプレッサーとガンを買うのは高価なので張る面積がそれほどでもないなら昔ながらの手作業で張っていくことになる。
床を張る方向は床根太と直行方向となり、床根太が走っている位置に床の実のオス側から斜めに下穴を開け、フロアネイルをポンチと金槌でアナログに打ち込んでいく。材料の端でなければ下穴がなくても打てるが、時々根太に打った釘に当たってしまうことがあり、打ち損じを避けるために下穴は必須だ。
床鳴りを防ぐために釘を打つ前に普通は床材に床職人などのウレタンボンドを塗るが、床を丸ごと張り替えることもあるかもしれないと今回は省略した。お客様の家なら省略できないが、自邸ならボンドを塗らなくてもしっかり釘を打っていればほとんど問題ないだろう。端部で根太がなく釘が打てない箇所はピンタッカーで補強しておいた。
また、フローリングでなくモルタル風の仕上にも挑戦してみた。通常モルタルを塗るのは下地がコンクリートでないといけないのだが、工夫をすれば出来ると考えた。最近は薄塗りで強度も高く、防水性、伸縮性もあり、どんな下地にも塗れるモールテックスという商品が流行っているのだが、価格がかなり高い。そこで、NSフロアハードという商品を使ってみることにした。通常のモルタルではできない薄塗りができる上、摩耗しにくく強度が高いという特徴がある材料だ。
まずは床はがっちりと組む。モルタルは動くとひび割れてしまうため、12mmの合板を二重張りにして床をたわみにくくした。合板同士は釘やビスとボンドを併用し、がっちり一体となるように。
床が張れたら合板からアクが出て表面にしみのように浮き上がってくるのを防ぐためのアク止めシーラーを塗る。説明書の通り1回目は5倍希釈で塗り、2回目は原液で塗って丸1日以上乾燥した。
次に、下地にしっかり接着するようにカチオンワン(#2)という下地調整材を鏝でこするように1〜2mmほど塗る。1週間ほど乾燥させた後、下地に水分が吸水されて仕上げの強度発現に影響が出るの(ドライアウト)を防ぐためのハイフレックスという塗料を5倍希釈で塗る。最後にNSフロアハードを5mmほど塗った。
乾燥したら完成だが、1ヶ月くらい養生したら、防塵塗装をしてゴミがたまりにくい床にしようと思う。ユカクリートという商品にする予定。