Tip73: 床を組む

床を考える

床は住宅を定義する上で屋根の次に重要な要素だ。平らな床がないと落ち着いて眠る事も出来ない。平だと水平移動するときに位置エネルギーが同じであまり力を使わないで移動する事ができ、ストレスがない。

現代では床の位置は地面より少し高くなっている。竪穴住居は床が地面だったが、床が地面のままだと寝ている間に虫などに襲われるかもしれないから、より高いところに床を組んでより快適に暮らすようになった。そうすることで、さらに湿気や虫から家を守り、より長持ちする家にもなる。

とても快適だと感覚で知っているからか、多くの人は初めて床を張ったら早速そこで寝転びたくなるに違いない。

床を組む手順

まずは90mm角程度の大引という部材を900mm間隔程度に設置する。大引は基礎の上に置いた土台に力をダイレクトに伝える役目を果たす。大引の下には900mm程度の間隔で床束を立てて大引がたわまないようにする。床束は昔は木製だったが、近年はホームセンターに売っている鋼性床束かプラ束を使う事が多く、それらは高さをネジで微調整できるのでとても便利だ。木だと経年とともに浮いてしまって役目を果たさなくなっている事も多いが、ねじならメンテナンスも簡単だ。

次に、それと直交する方向に45mm角程度の根太を1尺(303mm)間隔ごとに並べていく。こういう下地が曲がっていると、仕上がりも曲がってしまうので、ここでしっかりまっすぐ整っている事を確認する事が大事だ。DIYの場合は安い水平器や水盛りを使っても良いのだが、現代にはレーザー水準器というとても便利な物ができており、仕事も早く、正確になるので手に入れるのも良いと思う。高い物だと10万円を越えてくるが、最もシンプルな水平と垂直が見られるものであれば1万円強で手に入り、それだけでも相当仕事が楽になる。(安い方で十分革新的で大変重宝したが、全面リフォームになると結局高い方も買った。)

次は根太と根太の間に断熱材を入れる。断熱材は50mmのスタイロフォームを使った。カッターで簡単に切れるが、カッターは刃が短く、垂直に切るのが非常に難しいのでのこぎりか丸鋸を使う方が正確にできる。断熱材を入れたらほぼ床のように感じるので根太の上をひょいひょいと歩きたくなるが、断熱材を踏み抜いて落ちて痛いわ断熱材が割れるわで苦い思いをしている人を見た事があるので、合板を張る前は要注意。

根太とさらに直交する方向に捨て床として千鳥状に12mm厚の構造用合板を張り、その上に同じ方向にフローリングの床材を敷いて仕上げるのが一般的だ。根太を省略して24mm厚の構造用合板を大引の上にそのまま張るのも最近はよく行われている。

今回はフローリングでなくモルタル風の仕上に挑戦してみた。通常モルタルを塗るのは下地がコンクリートでないといけないのだが、工夫をすれば出来ると考えた。最近は薄塗りで強度も高く、防水性、伸縮性もあり、どんな下地にも塗れるモールテックスという商品が流行っているのだが、価格がかなり高い。そこで、NSフロアハードという商品を使ってみることにした。通常のモルタルではできない薄塗りができる上、摩耗しにくく強度が高いという特徴がある材料だ。

まずは床はがっちりと組む。モルタルは動くとひび割れてしまうため、合板を二重張りにして床をたわみにくくした。合板同士は釘やビスとボンドを併用し、がっちり一体となるように。

床が張れたら合板からアクが出て表面にしみのように浮き上がってくるのを防ぐためのアク止めシーラーを塗る。説明書の通り1回目は5倍希釈で塗り、2回目は原液で塗って丸1日以上乾燥した。

次に、下地にしっかり接着するようにカチオンワン(#2)という下地調整材を鏝でこするように1〜2mmほど塗る。1週間ほど乾燥させた後、下地に水分が吸水されて仕上げの強度発現に影響が出る(ドライアウト)のを防ぐためのハイフレックスという塗料を5倍希釈で塗る。最後にNSフロアハードを5mmほど塗った。

乾燥したら完成だが、1ヶ月くらい養生したら、防塵塗装をしてゴミがたまりにくい床にしようと思う。ユカクリートという商品にする予定。

ひょんなご縁から理想的な環境の古民家に出会ったデザイナーが、その日々の中で身につけた業を、日々の暮らしとともにアーカイブして行くウェブサイト。100の業が溜まったら、cotocotoというタイトルで誌面化予定。

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