Tip60: 模型を作る

模型は図面を立体化する作業であり、図面を元にすればある程度機械的につくることができる。スチレンボードに平面図を張りつけ、カッターで切り、立面図等をもとに壁を切り、それらを組み立てていく。

どんなに経験を重ねた建築家も、平面図と立面図だけで空間を完全にイメージしきることは難しい。最近はCG技術が発達し、コンピューター上で空間の中を動けるようになってきているが、実際の3次元で模型をつくることは空間を考える上で今も昔も最も空間を理解しやすいツールとしてあり続けている。

模型にもいろいろあり、プレゼンテーション用、コンセプトを考えるときのボリューム模型、図面を描きながら同時に空間を確認するための模型など、その目的によって縮尺や作る素材などを変えて作られる。今回は依頼主は自分自身なので、図面と同時に詳細を確認していくための1/50サイズの模型をつくった。

今回、もともとある家の構造を触らずに、吹き抜けにストーブを置きたいというかねてからの夢によってほとんど設計が決まった。条件は以下のとおりだが、クライアントが自分自身なので自分の好きを詰め込んで快適な空間にしつらえ直せば良く、思いの外スムーズに計画が決まるので楽しい。

  • 吹き抜けはなるべくダイナミックに空けて薪ストーブを置き、上下の階の繫がりが見えるように
  • 階段はルイスバラガンのような色鮮やかな壁と美しい階段
  • ひとまずは基礎等を触らないリフォームとしたい
  • もともとの家が狭いので空間を圧迫したり上下階の繫がりを犠牲にするが、個室はつくりたい
  • 浄化槽、給湯設備、給排水設備、風呂、便所、洗面、洗濯、薪ストーブなど設備導入が必要で、それらには妥協はしない分、広さには一旦妥協をして構造を触らず、増減築もないリフォームとすることで予算を抑え、将来的な増築を考慮した計画とする

模型にすると写真のとおり。こう見ると案外普通のプラモデルのようなものに見えるかもしれないが、模型は覗き込んでその空間に入り込んでこそ模型の意味がある。光の入り具合や奥の壁の見え方、高低差など、様々な情報をいろんな角度から覗いて確認する。学生の頃、先生たちが模型を置いてあるテーブルに頬をくっつけながら片目で覗き込む姿はなんとも滑稽に映ったものだ。そのため、模型写真を人間の視点から撮れるように壁を外せたり、断面で割ることができたり、その表現したいこと、見たい視点から撮影ができるように工夫をしておく。上の模型も覗き込めるように前の部分の壁のパーツを取った状態になっている。また、壁だけでなくぜひ家具をつくったり、その縮尺での人形を入れたりしたい。そうすると模型にスケール感が宿り、実際の空間をよりイメージできるようになる。模型写真を撮るときは実際に自分がそこに入り込んだかのように、人間の視点の高さで撮る。

ひょんなご縁から理想的な環境の古民家に出会ったデザイナーが、その日々の中で身につけた業を、日々の暮らしとともにアーカイブして行くウェブサイト。100の業が溜まったら、cotocotoというタイトルで誌面化予定。

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2021年3月から岡山県加賀郡吉備中央町の山林を譲り受け、セルフビルドで改修中。見学お手伝いは大歓迎!詳細は078-220-7211 (cott)またはこのメールフォームにてご連絡下さい。

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