Tip55: 法人化する

9月1日に13年半ほどやってきた個人事業を法人化した。再来年の10月から始まるインボイス制度の勉強ついでにお金の勉強をしたら法人化もありだとの結論に至ったのだった。

よく収入が1000万を超えてくると法人化するのが得だと言われているが、色々勉強してみると、必ずしもそうではないらしい。具体的にはここでは説明しないが、収入によって納めないといけないお金は税金以外にも年金と健康保険があって、それらに家族の有無、家族の収入などの諸条件を総合的に考えると、条件によっては例えば年収が300万でも法人化は十分にメリットがあることもあるそうだ。自分が個人事業で稼いだお金から払わなければいけないものを払って自分の手元に残るのはどのくらいになるのか。あるいは自分が会社で稼いだお金から会社が払わないといけないお金と個人に支給された給料から払わないといけないお金を払ったら、自分の手元に入ってくるのはどのくらいになるのか。扶養家族がいたらそれがどうなるか。それを世帯収入で考えるとどうか。とても複雑そうだが、ひとつひとつ紐解いて順番に計算していくと、そんなに難しいことではないので一度比較をしてみるのも良いかもしれない。
今と宝くじで10億円が当たったときとで自分の暮らしが変わるなら、お金で暮らしが変わるということ。その場合は手元に残るお金を考えることは暮らし方をデザインすることにつながるとも言えるかもしれない。事務的にも思える作業も、暮らしをつくるというクリエイティブな作業のベースとなる。加えて、分解するのはデザインで最も重要な考え方なので、訓練だと思ってぜひ。

また、会社を設立するにあたっては個人事業の時よりもたくさんの手続きがあって、諸手続きを自分でするなら、さまざまな機関に出向けば出向くほど社会の仕組みが少しずつわかってくるような気がする。複雑で面倒なのは毛嫌いしてきたが、やってみると業務内容は変わらずとも、なんとなくフリーランスの時よりも社会を回す立派な歯車のような気がしてほんの少し背筋が伸びるような気分だ。

どんな法人をどうやって設立するか

法人というのはいろいろ種類があるが、立ち上げられる法人のうち株式会社と合同会社が大半となる。会社と言えば株式会社と思う人が多いと思うが、今回私が設立したのは最近増えてきたと言われている合同会社。どちらも同じ法人で違いはあまりなく、大きな違いは有名かそうでないかと、経営者だけで出資するかそうでないかだ。どちらを選ぶかについては、社外から出資を募って事業を立ち上げる場合や、会社名を全面に出して事業を行い、世間のイメージによる信用力が欲しい場合は「株式会社」が良いだろうし、逆にそうではない場合は維持にかかる手間がより少なく設立費用も安い「合同会社」で必要十分らしい。そう言うと合同会社が株式会社の劣化版のように聞こえるが、合同会社は経営者=出資者なので株式会社よりも意思決定が早いなどのメリットもある。今や地球代表とも言えるIT企業GAFAの日本法人は4社とも合同会社なのは有名な話だ。

法人を設立するということは会社を設立するということだが、そのためには世間に周知し、認められる必要がある。そのために法務局で登記をする。登記とは個人や法人が持つ財産上の権利や義務を広く知らせるために公の帳簿に登録することだ。専門的な単語なので専門の業者に任せるべきもののように聞こえるし、実際にそれを専門として仕事をしている人も多いが、書類を作成して役所に通う手間を惜しまなければ専門家でなくても問題なく手続きできる。わからないことは役所の窓口で聞けば割と親切に教えてくれる。今回作った合同会社は自分で行うと6万円の免許登録税と印鑑代だけ、狙った日に設立するための待機期間を含めなければ2、3週間で会社を設立することができた。

法人を設立しよう

登記の前に何よりもまず社名を決める。社名は他に同じ名前があっても登記上は問題が無いが、同業種などは訴訟に至るケースなどもあるので一応同じ会社名はないかチェックしておくのが良い。登記のためには印鑑が必要なので、社名が決まり次第、印鑑を作成する。印鑑は代表者印、銀行印、角印の3種を作成した。この3種、またはそれに認印を加えて4種が一般的だそうだ。なお、代表者印には肩書を入れるのだが、会社の形態によって代表取締役、あるいは代表社員など変わるため、代表者の肩書も決めておく。

次に、必要書類を作成し、完成した印鑑を押印する。作成書類は設立登記申請書、登記すべき事項を記載したテキストデータ、定款(電子定款の場合は電子署名をしたデータ)、代表社員・本店所在地・資本金決定書、代表社員就任承諾書、払込証明書、代表社員個人の印鑑証明書。その他、今回は現物出資と言って、個人時代に使っていたパソコンなども現在の中古価値に換算して出資した。その場合は、資本金の額の計上に関する証明書、財産引き継ぎ書、調査報告書も添付する。個人の方でも資産を売却したとして経理が必要なので忘れずに。

提出する定款は紙ではなく電子定款で提出すると4万円の収入印紙が不要となるので電子定款がおすすめだ。ただ、そのために必要な電子署名は経験がなければ若干手間取る。JPKI PDF SIGNERというソフトで無料でできるが、その前に普段e-TAXで確定申告を出していない人はマイナンバーカードを取得して、カードリーダーを買うところからはじめないといけない。また、Macは対応されてきてはいるが、依然として行政手続きとの相性はよくないので、できればWindowsの最新OSが入っているパソコンもほしい。完成したら電子定款と登記すべき事項を記載したテキストデータを一緒にCD-Rに焼くか、法務局が提供しているソフトをインストールしてオンライン申請で提出。今回は確実にその日を設立日としたかったので直接窓口でCD-Rと一緒に提出した。大幅な訂正がなければその窓口に提出した日が法人の設立日となる。きりの良い日にするか、縁起の良い日にするか、思い入れのある日にするか。私は経理上わかりやすい1日設立にしておいた。本当は8月1日設立のつもりだったが、日曜で法務局が休みのため、1ヶ月待って提出した。1日の時点で会社がある場合、法人税の均等割がかかってくるから2日以降にした方が若干得ではあるようだが、きりが良い方が経理上もきりが良くて分かりやすい。

以上の書類を用意したら6万円を握りしめて法務局へ行くかオンラインで提出し、書類等に不備がなければ会社設立が完了する。法人設立申請の際の添付書類でないが、必ず必要になるので印鑑届出書も一緒に提出すると良い。書類を提出した時点で手続きが完了する日時を教えてくれる。問題なければ特に連絡などはないので、その日時以降に登記簿謄本を取得することができるようになり、無事に法人が設立されたことになる。

書類を提出して駆け回る

法人が設立できたということなので一息つきたいが、法人設立に付随する諸手続きがたくさんあって、むしろこれからの方が忙しい。法務局、税務署、市税事務所、県税事務所、年金事務所などを1日かけて走り回る。なお、私の場合登記手続き完了の時間が16時だった。諸手続きは1日でも早い方が良いが、わざわざ法務局に行くのなら午前中から近隣でついでの手続きをしたい。行く順番など考えてみたが、謄本がないとどこも手続きができない。朝から動かないと次の日にもまた手続きに回る羽目になる。どうしようかと思い国税庁法人番号公表サイトを見ると既に自分の法人番号を確認できたので謄本が取れるのではと思い、午前中から近所の法務局に行くと謄本を取得でき、そのまま駆け回って行政上必要な手続きをその日1日で済ませることができた。銀行は予約をしておいてまた後日。諸手続きの詳細は後述のとおり。

  • 法務局で印鑑証明を取得するために印鑑カードを作成する。登記完了後、法務局に行って申込書を書き、少し待てば発行してもらえる。受け取り後、さまざまな手続きで必要な印鑑証明と登記簿謄本を必要な数だけ取得。なお、このときに提出する申込書の押印が曲がってしまったが気にせず提出すると印鑑証明を取得したときに受け取る書類の押印も当然のことながら曲がったままになってしまった。曲がっていても特に問題はないので気持ちの問題だが、曲がってしまったら新しい紙に押印し直すのがオススメだ。
  • 神戸市の場合、神戸市と兵庫県のそれぞれの市民税、県民税事務所にそれぞれ法人設立届と登記簿謄本コピーと、定款のコピーを提出。書類は県と市の2セット必要で、受け取りの窓口は一緒になっていたが、長田区に行くのが少し遠くて面倒だった。
  • 管轄の税務署に法人設立届、給与支払い事務所の開設届、源泉所得税の納期の特例の承認申請書、青色申告承認申請書を提出。一応謄本コピーもあった方が良いとのことなのでそれも添付。提出前にコンビニで提出書類一式のコピーを取ることを勧められるので、コンビニへ。
  • 法人は事業主である役員も含め、社会保険にも加入義務があるので年金事務所で健康保険と厚生年金の新規適用届を提出。新規適用届、謄本コピー、被保険者資格取得届が必要。事前に電話をしたら記入書類を送ってくれ、事業所の所在地のグーグルコピーも追加で持ってくるように頼まれた。税務署と違い、提出したコピーをもらえた。提出後、郵送されてくる口座振替依頼手続きは銀行口座が作成できてから行う。現在はネットバンクでは口座振替ができないが、今後できるようになるよう要望中とのこと。
  • これまで国民年金だった場合、年金は自動切り替えされるので停止する手続きは不要だが、国民健康保険は年金事務所から新しい保険証が届き次第、区役所で脱退手続きをする。神戸市はオンライン手続きができるので、窓口でなくてOK。新しい保険証は2週間で届いた。
  • 法人なのに個人名の口座へ振り込むよう案内されると取引先からするとちょっと不安になるので、義務ではないが、法人名の銀行口座は作成したい。それまで資本金は個人口座に置いたままになっており、支払いが必要なときは随時社長から借りたことになって経理が面倒なので、なるべく早く口座を作成してそのお金も移したい。銀行に法人口座を開設するためには銀行にもよるが、だいたい定款、謄本、印鑑、印鑑証明は必要だ。とりあえず地元の銀行、ネットバンク、メガバンクの三箇所で口座を開設したのだが、事前に電話で必要書類だけ聞いておいて適当に窓口に行くパターンと、ネットのみで申し込みが完結するパターン、インターネット申し込み後、書類審査に通ってから実店舗に行くパターンがあった。ちなみにJAバンクは書類を持って行ったその場で通帳を発行してもらえたのだが、キャッシュカードは発行自体してもらえなかった。(その話をJAの友人に話すと何も問題なく発行できるとのことで、またお店に行くとすんなり発行手続きをしてもらえた。)。PayPay銀行は資料送付から1週間後にメールで結果が届き、さらに6日後にキャッシュカードが届いた。三井住友銀行はウェブで申し込み、資料を送ってから2週間後に電話で簡単なヒアリングがあった。その際に戸籍謄本と事務所の登記簿謄本を追加で送るよう言われたのですぐに追加で送った。ただ、建物が登記されておらず代わりに土地の固定資産税の明細を送ったため書類が不足だとまた連絡があり、事情を説明して建物の固定資産税の納税通知書をまた追加で送る。これで資料を送るのは3回目で、毎回即日で資料を出し続けたのに20日が経った。そこまで堅いこと言わずに進めてほしいなと思ったのは正直なところ。そのさらに1週間後に面談のメール連絡があり、案内されたサイトから予約を入れる。面談日は2番目に早い日程でさらに1週間後だった。銀行に行くとその日に通帳がもらえた。キャッシュカードも後日に届くし、インターネットバンキングのライト版も無料で使えるらしい。面談後に審査開始という話を耳にしていたのだがコロナ後は面談前に審査が完了するようになっているのかもしれない。ついでに年金事務所から送られてきた口座振替依頼書に金融機関確認印を押してもらう。メガバンクでは法人の口座開設が断られることも多いそうだが、長く個人事業で続けてきたのを評価してくれたのかもしれない。
  • 法人口座が出来次第、法人用クレジットカードも申し込み。手順としては個人のカードとだいたい同じだったが、個人のカードよりも発行に時間がかかることが多いようだ。申し込み10日後に審査が完了っぽいニュアンスのメールが届き、さらに10日後にカードが届いた。
  • 従業員がいる場合は労働基準監督署に行く。
  • その他、個人事業の頃から加入している共済や保険によっては内容の変更をしないといけないものもあるので、それらも確認する。私の加入している小規模企業共済はその必要があるようなので問い合わせてみると、引き続き個人事業も続ける場合はそのままで良いらしく、そのまま何もしていない。

ひょんなご縁から理想的な環境の古民家に出会ったデザイナーが、その日々の中で身につけた業を、日々の暮らしとともにアーカイブして行くウェブサイト。100の業が溜まったら、cotocotoというタイトルで誌面化予定。

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2021年3月から岡山県加賀郡吉備中央町の山林を譲り受け、セルフビルドで改修中。見学お手伝いは大歓迎!詳細は078-220-7211 (cott)またはこのメールフォームにてご連絡下さい。

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