Tip59: 山を買う

岡山県で山を買った。不動産の購入は通常不動産屋などを介して行われるようだが、山に関しては法律整備等が進んでおらず、当事者同士の条件が折り合えば、比較的簡単なようだ。今回は親戚から譲り受けるのでなおさら所有者とやりとりしやすいため、自分で手続きをした。山を買うというのは契約し、代金を支払えば買えるのだが、土地を所有したことを一般に知らせるために登記を行うのが一般的で、行政手続きがもろもろからんでくる。ただ、登記というのはTip55で行った法人設立登記のおかげできちんと調べればできるものだと思っているし、法務局ではわからないところがあっても割と親切に対応して下さるので、なんだか難しそうだと拒絶反応を示さず、とにかくやってみる。

山の値段を決める

山、つまり土地を買うということなので当然費用が必要で、まずはその価格を当事者同士で合意できる額を相談する。親族から譲り受けるということで、無償でも良いような話だったが、親族からの売買は不当に安く取引すると税金がかかるようなので、今回は当時購入された金額をある程度そのままで買うことにした。不動産は財産になるし、権利関係も変わるのでその方が綺麗だろう。具体的には購入当時の価格だと聞いていた坪単価に、登記謄本上の面積の合計をかけた価格とした。

通常、田舎の山は相場はあってないようなものなので国交省の土地総合情報システムの不動産取引価格情報などで過去何十年かに渡る近隣の取引価格を調べ、ある程度の目安にするが、今回のように取引が少ない田舎では多少参考になった程度だった。

また、さらに建物もついているので建物の価格も決めないといけないが、償却期間は過ぎているのと、片付けや修繕にお金がかかるので無料で譲り受けた。通常は経済的耐用年数というものを想定したり、現在の課税評価額を参考にしながら価格算定が行われるようだ。

契約書をつくる

まずは売買をするにあたって売買契約書を作成した。親族からのものなので簡素なものではあるが、これがないと土地を自分のものにしましたという証明を誰にもできないので、必須となる。フォーマットはネットに転がっている土地売買用ものもの拾ってきて作成し、双方が内容について合意できたら契約金額に応じた収入印紙を貼る。土地や建物と言えばイメージとしては人生最大の買い物だが、その金額はそこまで高額でなく、法人設立をした際の収入印紙の方が高額だった。

契約書に代金の支払いと引き換えに行う登記を以て契約を完了する旨を記載した。

登記する

通常、売り主が目的物の引き渡しおよび所有権移転登記の義務を負うものなのだが、親戚のため、委任状を書いてもらってこちらで行った。準備する書類として、登記申請書、建物平面図、代理で手続きを行う場合は委任状、売り主の住民票、印鑑証明、その他固定資産税評価証明書、土地の権利書、売買契約書(コピー) など。土地の権利書がない場合は事前通知と言い、法務局より後日確認の書類が送られてくるらしい。

購入した土地は8筆分あったが、登録申請は一枚の紙に複数の地目を書いて一括でできるようだった。

不動産取得には免許登録税がかかり、土地の売買による所有権移転の場合1.5%(R5.3.31までの軽減措置)、住宅用建物の場合は0.3%となる。

建物については所有権移転登記をするためにはもともとの建物が未登記であったため、そもそも移転登記をすることができなかった。通常は所有者に登記をしてもらってから移転登記をするようだが、今回は親戚間の話のため、一旦建物はそのままにしておいて、税金だけ親戚に請求が行かないように市町村の固定資産税課で所有者移転と固定資産税税金の請求先の申請をしておいた。未登記家屋所有者変更申請書に記入し、新所有者と前所有者の印鑑証明と売買契約書などの写しが必要。

法務局では事前相談をしているが、現在は混んでいて予約できるのは数週間先となるようだ。ただ、自分で登記をする場合は必ずと言っていいほど不備が出るので事前相談はお願いしておきたい。

修正するために法務局に何度か通う

しばらくすると法務局から連絡があり、所有者の住民票に記載された現住所と登記された住所が異なるため、まずは所有者の住所変更登記が必要で、一旦申請を取り消さないといけないとのことだった。法務局には何度も通うものだと思って自分で手続きをしているので仕方ない。

再度親戚に住所変更登記の書類を書いてもらって提出し、その足で再度登記申請を行う。

そうするとまた法務局から連絡があり、土地が8件あるうち1件の地目が畑で、畑の所有権移転登記は農業委員会の許可が必要なので、今回は7件について受け付けるとのこと。書類には捨印を押していたので法務局の方で修正してくれるようだ。そういえば倉庫の横に小さな平地があった。

許可をもらうためには農業者である必要があり、そうでない人が農地を持つことはできない。農業者になるためには、条件が厳しく、地目を畑から山林に変更するのが簡単だと教えてもらった。

そこで、非農地申請書を親戚に書いてもらい、それを市町村に提出する。しばらくすると農業委員会が現地確認し、許可を出したら地目変更ができるようになるので、また法務局へ。法務局で原野への地目変更を申請すると法務局からも土地を見に来てくれたが、原野でなく雑種地ということになり、再度修正して申請し、ようやく手続きが完了となった。

里山と山村の二拠点へ。

実は3月から岡山との二拠点で生活を始めている。岡山の拠点は山の中のいわゆるぽつんと一軒家だ。とりあえずは場所の整備をしながら、月に一度程度往復をしている。二拠点生活といえば都会と田舎というのが定石だが、どちらも田舎だ。

そんなところで何をするのかといえば、仕事は以前のままデザインの仕事をメインにしながら、今よりも自然に近い場所でより自然に近い暮らし方と働き方を実践していく。ウイルスの流行よりも前に約1年海外でリモートワークをし続けてきた時は関係性ができていないとやりづらいこともあったり、さすがに若干の不便はあったが、昨今はコロナのおかげでリモートワークが一般的になり、そこに常にいなくてもできるということは世間一般常識のようになっていてとてもやりやすくなった。

文化を育むこれからの働き方と暮らし方。

これまで住んでいた山ではオーナーの植木屋さんが切ってきた木を薪ストーブにしたり、洗面台にしたりと、自然に生えている木を暮らしに生かす面白さを実感し、手を入れれば入れるほどその暮らしの良さに気づくことができた。また、まちづくりにも長年関わってきて、そのまちの魅力はそこに住んでいる人自身の魅力で、その土地で育まれたものを使って作られてきたものが魅力的だった。

親戚の山を譲り受けるという話が挙がったとき、それらのこれまで歩んできた軌跡のすべてがいまひとつのところに収束するような気持ちになった。そこにあるもので創意工夫し、自分自身が魅力的に思うものをこれまでの経験値を生かしながら作っていく。これまで何度もDIYしてきたが、いよいよ土地と家を所有し、すべて自分たちのために作る暮らしとなるのでDIYのモチベーションがとてもあがっている。

世の中には知らない誰かを苦しめるようなブラックボックスがたくさんある。ホームセンターで買った木材は遠い国の森林を過剰伐採し運ばれてきていたものだったり、ごみをゴミステーションに捨てたごみは実は知らない土地の地面の中に埋め立てられどこかの土や地下水を汚していたり、環境に優しいつもりで太陽光発電を導入してみたら、実は生産するときに化学薬品を多く使うために工場の排水が問題になっていたり。目まぐるしく過ぎ行く毎日の中で、普段何気なくしている行動が実は誰かを苦しめているものなのか逐一考えを巡らせることは難しく、さらに一個人の行動でどうにかできることではないことが多いので結局放ったらかしになってしまうだろう。山には水、土、太陽、火、風、植物など、根本的に人が生きる上で必要なものが揃っており、世の中のシステムになるべくぶら下がらずに済ます方法があるなら無理なくそれにチャレンジしてみたい。まずは自分で切った木を材料にして建物を建てたり燃料にするところから。そういう農村の昔ながらの暮らしをイメージしがちな循環を現代社会に無理なく取り込めるようリデザインしていければと思う。多くの人にとって一生で一番大きな買い物を自給できれば、必要な収入が相当に減り、働く意味や暮らし方も変わりそうなので、そのへんも考察してみたい。

ひょんなご縁から理想的な環境の古民家に出会ったデザイナーが、その日々の中で身につけた業を、日々の暮らしとともにアーカイブして行くウェブサイト。100の業が溜まったら、cotocotoというタイトルで誌面化予定。

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2021年3月から岡山県加賀郡吉備中央町の山林を譲り受け、セルフビルドで改修中。見学お手伝いは大歓迎!詳細は078-220-7211 (cott)またはこのメールフォームにてご連絡下さい。

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