Tip3: 伐採する

生い茂ってしまった木々を片付けた。

重機が必要なところを造園屋さんの家主がきれいにしてくれるというので、家主と一緒にチェーンソーを持って、いらない枝を払い、家主さんにはユンボ(またはバックホー)で、庭にする部分の土をさらってもらった。(むしろ来てくれた日に合わせて現場にいるようにした)家主が重機を出してくれるのはとてもありがたいが、庭の木を切ったら元に戻せないので、切るときに家主がいてくれることもなおありがたい。

作業内容は文字にすると簡単だが、大きな木の枝は太くて重く、そこそこの重労働である。のこぎりで切ると、とんでもない作業量になるので、ここは文明の利器の力を借り、チェーンソー片手に高所作業車のゴンドラに乗って枝を払っていく。土をさらう前には作業の邪魔になる大きめの木をチェーンソーで伐採し、あらかじめのけておく。

植木ばさみ、剪定ばさみ、剪定のこぎり等を使い、小さな枝を払ったり樹形を整えていく作業を剪定と呼ぶが、ある程度の太さの枝をチェーンソーを使ってどんどん落としたり、木々を切り倒して開拓していく作業はもはや伐採と呼ぶ方が良いだろう。伐採作業には必須のチェーンソーだが、下手をすると命すら危ういので扱いには細心の注意を払わなければならない。

チェーンソーの使い方

チェーンソーは皆が知っているとおり、刃を回転させて木を切る道具で、丸太等の大きな木をざっくり切るときに使う林業で必須のアイテムだ。ジェイソンが13日の金曜日に手に持っているのもあり、絶大な破壊力があるイメージだろう。そのイメージ通り絶大な破壊力なので、正しく使わなければ自分もやられてしまうので、きちんと説明書を読むことはとても大事だ。

始動の仕方は他のエンジン式農機具と同じく、ポンプで軽く燃料を送り、チョークを引いて、紐を勢い良く引く。一瞬エンジンがふいたらチョークを戻して、再度紐をひいて始動。しっかり腰を入れ、片手でハンドル、片手でレバーをそれぞれ握って刃がしっかり回っていることを確認してから、原則として刃の下部、手元側の方を使って切る。刃がキックバックしてきたら顔が真っ二つなので注意しすぎても良いぐらいしっかり腰と腕を入れる。顔の位置も要注意だが、脚が最もけがをしやすいので要注意。片手を離してひっかかった枝をつかんで下に落としたりすることもあるが、刃が止まったのを確認してから手を離す。足ぐらいなら生きていられるが、顔や体を切ると命が危ない。木を切り倒す時は倒れる先に誰もいないことをしっかりと確認する。切り方が適当だと切れた瞬間に急に抵抗を失ってはねたり、木が切り口からずれたりすることもある。力がどのように木にかかっているかイメージできるようになると、その力を逃がすような切り方をできるので、理論を勉強するのも大事だ。それを勉強していないと足などを下敷きにするのにも注意したり、すぐに逃げられるように、また転ばないように切る前には足下が安定しているかを確認したりしながらの作業になる。反射神経や運動能力も大事だが、危険はもっとなくすことができるのだ。

よくあるケースの基本の切り方として、木についている枝は下から切ると重力で下がってきた枝が刃をはさんでむので、上から切る。ただ、太めの枝は先に枝の下を少し切ってから、上から切る。そのまま上から切ると、ある程度切った段階で枝が自重で落ちてしまい、切り口の下がひきちぎられたようになってしまう。その下を切る具合であるが、切りすぎると枝が自重で落ちて来てチェーンソーを挟んでしまうので、そうならない程度だ。倒した木を細かく切りたくてその木が谷などにある場合は、逆に切った位置が下がってきて刃をはさんでしまうので、大雑把に言えば、先述の手順の逆となる。

また、チェーンソーを触ったことの無い人にはあまり知られていないが、使用者として必ず知っておかなければならないチェーンソーの側面として、燃料とは別に潤滑油が必要で、ふたつのタンクに給油する必要がある。チェーンソーはただエンジンで刃を回転させて切るだけでなく、刃に油を注ぎ続け、チェーンとガイドバーあるいはチェーン同士の接合部の摩擦を減らし、ガイドバーの摩耗で焦げ付いたりするのを防ぎながら使うことで、きちんとした性能を保つことができる。そのため、切れ味が悪くなり、切りくずが粉のようになったり焼けるような様子を感じたらすぐに作業を止め、オイルがきちんと出ているか、刃はきちんと研がれているかを確認する。チェーンソーはよく整備できていると力を入れなくてもチェーンソーの重みで刃が木に食い込んでいってくれるので、切れないからいって力ずくで無理矢理作業を続けず、きちんとメンテナンスをすることが機械の消耗という点と安全な作業という点でとても大事だ。木を切る用のチェーンソーで誤って土、石、鉄を切ってしまったりすると刃のメッキが剥がれて一気に切れなくなったり、あるいはチェーンが切れてしまって飛んできて大変危険なので注意する。他にもガイドバーの掃除、アイドリングの調整、エアフィルターやキャブレーターなど、たくさんの部品のメンテナンスなども必要だが、様々なトラブルに見舞われながら少しずつ覚えてくるものだ。

山の伐採作業にもたまに行くが、自然の中で人間たち数人で10m、20mの木々をズドーンと切り倒していくと、みるみるうちにそこに光が射すようになり、寄り付きもできなかったところに広場ができていく。自然の大きさと同時に、人間のすばらしい開拓精神、そして心地よい疲れを感じるひとときである。

あとは、切りまくった枝たちの片付けを。植木屋さんの基本は掃除からとも言う人もいるほど大切なのが掃除で、切り倒せば倒すほどそれもなかなか大変な作業になる。どこかに山盛りにしておいて土に還るのを待つか、燃やすかだが、寒いので作業をしつつ、暖をとりつつ、少しずつ焼却炉で燃やしていこう。

(19.11.22追記)そうやって山仕事をしたり、大家さんの手伝いにたまに出たりと、木々にとても身近な生活をしていると、薪ストーブにちょうど良い場所だと思うようになり、導入した。その木々を切って、割って乾燥させて燃料にして灰を土に還している。大変だが、暮らしの中に循環を感じるので暮らすための仕事だという実感がとても湧いて来て、現代人としても理想的なライフスタイルに近づいているような気がしている。

(22.02.23追記)以上の記事を読んでいて、まだチェーンソーに慣れていない頃の自分が書いていたのは危険を運動神経や経験のみで避けるような内容で少し恐ろしくなった。テクニックがいくらあっても不確定要素があって万が一避けきれなかったときは即怪我につながる。危機一髪な状況で仕事をこなしても何も格好よくない。おそらく林業従事者以外の多くの人がまだ以上のような感覚で作業をしていると思うが、2年余りチェーンソーを使って玉切りや特殊伐採をしてきて、安全に作業をするためにできることがたくさんあることを知った。そのための装備のうち統計上最も怪我をしやすい脚を守るチャップスと呼ばれる防護着か防護ズボンは仕事で使うなら義務化されているので使わないといけない。できればそれに加えてチェーンソーブーツ、手袋、ヘルメットも一緒に買うのが良い。全部揃えると安くても5万円程度かかるしかさばるので林業従事者以外で全部持っている人には出会ったことがないが、命を守るためにできることはたくさんあるのだ。そのへんも仕事で使う場合は義務化されている講習で教えてもらえるので、チェーンソーを使う前にはぜひ講習を受けにいくのが良いと思う。

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ひょんなご縁から理想的な環境の古民家に出会ったデザイナーが、その日々の中で身につけた業を、日々の暮らしとともにアーカイブして行くウェブサイト。100の業が溜まったら、cotocotoというタイトルで誌面化予定。

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