Tip65: 突き固める

リフォームで柱の位置を変えるため、土台を載せる基礎を増設することとした。耐力壁を載せる訳ではないので無くてもできなくはないが、あった方が大工仕事が簡単になり、より強い建物になる。基礎にはベタ基礎か布基礎が一般的だが、既存の基礎は布基礎と呼ばれる逆T字形の基礎だったため、同じ布基礎にした。

墨出し

まずは基礎を作る位置を決める。上階と面一のの壁面を作りたいので、2階の柱と柱の中心線を基準にする。2階の壁と面一になる位置に1階にも壁を作るため、2階から下げ振りを2カ所落としてきて、それらの点を結んだ線を基礎の中心線とし、既存の土台の上に糸を引っぱった。

根切り

まずはその位置を中心に600mm~800mm程度の幅で深さが今の基礎の底より10cmほど深い穴を掘っていく。砕石の下に割り栗石という大きめの石を敷くと良いのだが、既存の地面が岩盤であったため省略し、砕石が入る分を掘るだけで済ませることに。作業を省略したのは良いが、穴掘るスコップでは岩盤に歯が立たず、はつり作業になったためあまり行程を省略できた感はない。

転圧

穴が掘れたら砕石を入れる。砕石は通常の原石を割ってできたクラッシャーランと呼ばれる砕石に細骨材を調合してより締め固まるように調整された粒度調整砕石のM30(粒が0~30mm)という砕石を近所の採掘場に取りにいき、軽トラックに積んでもらって2往復。軽トラ一杯900円。

砕石を全体に敷き詰めたら転圧する。転圧は角材等に持ち手を付けて作ったタコと呼ばれる道具をつくれば手作業でできるが、しんどいし心許ないのでランマーという機械を使った。他に転圧する機械にプレートコンパクター、通称プレートと呼ばれるおばあちゃんが買い物などでよく引いているかごみたいな形のものもあるが、それだと基礎としては締め固めが甘いのでランマーが良い。70kgくらいあるので室内への搬入はユンボで行った。始動方法は草刈り機などと同じで、スターターロープを引いて始動し、エンジンの回転数を上げるとランマーの足が振動して爆音をあげながら地面を突いていく。屋内に充満する排気ガスを我慢しつつ、角材を地面に置いて基準線より水平の水糸がどのくらい高いか低いかを見て何度か転圧しておおよそ平になるまで調整。

転圧に潜むデザインの可能性

転圧は土を突き固めるだけの単純作業だが、強固な地盤が作れたらこんなふうに建物の基礎もつくれるし、道も造れる。雑草が生えてくるのを抑えたり、水を溜まるようにしたり流れやすいようにしたり。土の表面をしつらえる前に土地の形をユンボで触れれば、土地を思うように自由な造形でデザインすることができる。

昔のたたきという土間は土を叩いて固めただけのものだし、版築という方法で土を型枠の中で幾層も繰り返して突き固めていけば壁になる。壁ができるのなら建築だってできるだろう。土が固まれば器だってできる。土木作業員の単純作業に思える突き固める作業には、案外多くのデザインの可能性が潜んでいるかもしれない。

ひょんなご縁から理想的な環境の古民家に出会ったデザイナーが、その日々の中で身につけた業を、日々の暮らしとともにアーカイブして行くウェブサイト。100の業が溜まったら、cotocotoというタイトルで誌面化予定。

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