Tip4: ポンプを動かす

農家には大切な水。彼らはとても上手に水を使う。米づくりにとても大切な水だが、人間にとってもっと大切だ。家はもともとボーリングして、揚水ポンプが設置してあり、家主の話ではポンプも問題なく動くだろうし、電気が来たらすぐに蛇口から電気が出るだろうということだったが、案外苦労した。ただ、水のことをしっかり考えることができた意味ある過程だったのでこの作業もTipsとして記しておく。

電気の力で水を汲もう

朝、関西電力に電話すると、その日の昼に作業員が来て、送電してもらうことができたので全てのブレーカーをあげた。電気が来るまでは、日没からの作業が日のわずかな明かりと車のハイビームに照らされてする作業が修行のように思えたが、明るいとゆったり作業ができるし夜になっても一服ができる。夜が来るのが怖くない。電気は偉大だ。電気の次は水があればもう住めるだろう。お茶も飲めるしトイレもできる。家には灯油のボイラーがあるのでお湯も出て風呂にも入れる。

そこで、早速揚水ポンプを動かそうと試みた。しかし、何をしてもうんともすんとも言わず、いきなりつまづいてしまった。他の電動工具が動くのでコンセントに電気はきちんときている。空気がもれている様子もないし、そもそも動いていない。とりあえず呼び水を入れてみるのだが、動く気配もない。呼び水とは、ポンプを初めて動かす時や、しばらく止めていて久しぶりに動かす時などに水を入れてやることで、たとえば2Lなど入れてやると揚水しはじめるらしい。はじめは慎重にコンビニで買ってきたミネラルウォーターを入れたのだが、全く水が揚がってくる気配がなくこれはらちがあかないと思い、敷地に貯めてある雨水を入れた。2Lを5杯ほど入れたがうんともすんとも言わない。

さすがに分からないので近所のラーメン屋で昼休憩をしながら説明書をインターネット上で探して読むことに。型番が古く、同メーカーの新しい機種のものしかなかったが、ひとつひとつ確認していく。ラーメンを食べ終わって、再度説明書の手順をひとつひとつ確認してみるが、それでも全く動かず、通電している気配もない。困ったなあとドライバーで外せるネジを順番にはずしてみたり触ってみたりしながら、ふと電線が集まっているところの奥にあった黒いボタンを押してみると、ポンプがごうごうと動き出した。ブレーカーが落ちていたのだった。

そういえば以前うちの村の集落営農で米を袋に入れて行く作業をしていた際にも、ライスリフトの負荷がかかりすぎてブレーカーが落ちていたことがあった。その時は営農組合長と農会長と私が3人掛かりで大のおっさんたちが小一時間、ああでもないこうでもないと各々自分の思う原因を探りながら触ってみるがうんともすんとも言わず、これはいよいよ壊れたか、と、組合長がメーカーに来てもらうように電話をしている時に見つけた黒いボタンをポチっと押したら動いた、なんてこともあった。そういえば精米機でも同じように小一時間、時間をとられたこともあった。そういう経験から、どこもおかしくない時は、ブレーカーに発想がいくようになったはずだったのだが。

機械のブレーカーの形状や位置は機械によってさまざまだが、多くは黒い小さなボタンのようなもので、配線が集中している辺りにあることが多い。機械がうんともすんとも言わないときは、ブレーカーを探してみるのも良いだろう。それにしても、もう少しブレーカーが落ちていることが分かりやすい仕様にしてもらえると助かるのだが。

さて、これで蛇口から出るだろうと、蛇口をひねるがやはり出ない。そして今度はポンプが回り続けて一向に揚水しない。再度電源を落とし、呼び水を2L入れて動かしてみたり、蛇口をあけたり閉めたりするが、出ない。もうどうにも分からないのでこれで出なければあきらめようと、もう2Lを2回入れてみると、動き続けていたポンプが止まった。これは、と思い蛇口をひねると水が出た。そのときの感動は温泉を掘り当てたことはないが、それに近い感覚だっただろう。早速その水をストーブで湧かしてお茶を飲んだ。我々の体のほとんどは水でできているので、この水が私の血肉になっていくのだ。

水はどこからやってきてどこへやっていく。

同居人は家を見に来たときに井戸水と聞き、ウォーターサーバーを契約したいと言っていた。確かに井戸水と聞くと、一般には雨水が貯まったものを汲んで使うようなイメージで、濁っていたり雑菌がたくさんいたりするような水をなんとか浄化して使う、サバイバルを連想するかもしれない。

だが、井戸水は溜めた雨水をそのまま使うのでなく、地下水を使う。雨水に含まれるほこりやゴミ等は土の層を何年もかけて通って降りてくる間に除去され、それが地下水として地中に流れているのだ。我々のように山の際にあるような場所では近隣に他の家や田畑がないことが多く、農薬や汚染水が流されにくいため割ときれいで、草や地中にある微生物が出すミネラルが溶け込んでいたりするのでおいしい。スーパーで売られている水をミネラルウォーターと言うが、その水は言わばある山などで採れた井戸水で、それがペットボトルに詰められて、○○の天然水だったり、おいしい水だったりというラベルを貼られて売られている。つまり、井戸から汲み上げられて蛇口に出てくるのは淡河のおいしい水なのだ。

水を使うということは使った後の水も処理しなくてはいけないのだが、流した水は公共下水道に流してきれいにしてもらうか、敷地内に設置した浄化槽にいき、きれいにしてから放流する決まりになっている。我が家は浄化槽があるのでそれを使う。(公共下水道が来ているのかはわからないが、公道まで距離がありそこまで水道管をひくのには相当の工事費がかかるのでその案は現実的ではないし、ランニングコストも上水の料金ぐらいかそれ以上に下水料金が毎月かかるので素直に浄化槽を使うのが良い。)浄化槽とはだいたいトイレの外あたりにあるマンホールの下に埋まっている大きな箱のようなもので、微生物の力で糞尿を分解し、きれいにしてくれる。単純な仕組みのものなので、とても不思議なだなぁといつも思う。浄化槽は年に一度は掃除しなければいけないことが法律で定められているので、トイレを使い始める前に、マンホールのふたを開けてさくっと掃除し、きちんと水が張られているかチェックする。浄化槽の掃除をすると、ビニルがたくさん出てきた。ビニルなどは言語道断だが、水に溶けにくいトイレットペーパー以外のもの、たばこの吸い殻や紙おむつ、普通のティッシュペーパーさえ流してしまうと浄化槽が詰まってしまう恐れがあるので流すべきではないのだと、こうやってメンテナンスをしてみると分かる。水に流してしまえば終わりではなく、責任を持って流さないと自分が痛い目を見るのだ。蛇口をひねれば水が出て、レバーを引けばどこかへ水が流れると思っていた頃の自分を殴ってやりたい。

ようやく水道が整い、水を使うのに水をくむポンプと浄化槽の空気を送るポンプにわずかな電気代がかかるが、水道料金と下水処理料金はタダみたいなもので、おいしい水が飲み放題だ。(といっても、ポンプ、配管、浄化槽などの設備投資費やメンテナンス費がかかるので、一概に安いとも言い切れない。)地下水は年間を通して温度があまり変わらないため、夏は冷たく、冬は暖かく感じる。ただし、場所によって雨水以外にも流れ込んでいたりする場所があったりするので必ずしもきれいな水が出る訳ではないし、環境汚染によって有害な成分が溶け込んでしまったりと、時々刻々と変化して行くため、飲用に使う前には調査するにこしたことはない。水質検査は簡単なのでまた記事にしよう。

小さな循環がつくる、環境意識。

こうやって水を敷地内だけで完結させるようにすると、蛇口の水はどこからやってきてどこへ流れて行くのか、そしてそれがどのようにめぐりめぐってまた使う水になるのか。そういう地球全体の循環を意識することになりそれがとても良いことだと思う。我が家は単独浄化槽で、トイレ以外の雑排水はそのまま排出されているので、将来的に雑排水も一緒に処理する合併浄化槽にするにしても、まずは環境負荷の少ない微生物が分解してくれる洗剤を使いたいと思う。いずれは、生ゴミを土に埋めて肥料にしてみたり。おいしい水を飲むために、汚染水を排出したり、土を汚染させないように心がけたい。

ひょんなご縁から理想的な環境の古民家に出会ったデザイナーが、その日々の中で身につけた業を、日々の暮らしとともにアーカイブして行くウェブサイト。100の業が溜まったら、cotocotoというタイトルで誌面化予定。

くわしく見る

お問い合わせ




2019年2月から4月まで、セルフビルドで古民家改修中。見学お手伝いは大歓迎!詳細は078-220-7211 (cott)またはこのメールフォームにてご連絡下さい。

More Stories
Tip14: 左官壁づくり