Tip23: 草刈り

いよいよ農家で最も身近な業、夏の草刈りの時期になってきた。米農家にとって、この夏の草刈りが一年で一番の重労働かもしれない。村の共同の草刈りでは太陽が高い時間に作業をすることもあるのだが、「滝のような汗」という言葉はこのときのためにあるのだろうというほどに、汗が出る。飲み物を飲んだらそれがそのまま出てきているかのような勢いで出てくるのであまり飲み過ぎたくはないのだが、飲まなければ倒れてしまうので、視界を遮る汗を肩でぬぐいながら作業をするしかない。個人の草刈りであれば早朝5時半とか、夕方6時とかにすれば良いのだが、共同でやるときはそうもいかないことも多いのだ。

草刈りとは、文字通り草を刈ることで、棒に回転する刃がついた草刈り機を使って田んぼのあぜ道に生えた雑草等を刈っていく。草はアスファルトには生えないのだが、土があるところにはすぐに生えるので刈り続けないといけない。農業は土の上でないとできないので、当然農地全てに草が生える。草が生えないように除草剤をまくと楽ではあるのだが、法面が雨風にさらされてくずれていくので草が必要なのだ。このあたりでは年3回刈るのが主流で、刈り続けるとだんだん草が刈りやすい芝のような草になってくるらしい。この道50年の隣の植木屋さんが試行錯誤し続けて最近ようやくたどり着いた結論は、「草はマメに刈るのが良い」ということだそうだ。4月〜5月と7月〜8月、10月にそれぞれ1回ずつすべての田んぼの草を刈っていく。

梅雨で生長した胸のあたりまで、あるいは背丈以上の草むらを正面に、エンジンを始動して草刈り機の刃を回し、左右に草刈り機を振り回しながら進んでいく。草刈り機は正式には刈払い機というだけあり、刈って払うことも重要で、刈った草を田んぼや溝に落とさないようにするのにも気を使わなければならない。半時計回りに刃が回るため、左に刈った草を寄せたい場合は溝を右側とするとやりやすいだろう。振り回す幅が広いと草を払うのにかなりの力が必要だが、振り回す幅が狭いと一度に刈れる面積が小さい分長い距離を歩かなければいけないので、どうするかは悩みどころだ。そんなこんなでもがきながら、自分が通ったところがジャングルから公園のようになっていく。そこに生き物がいようがおかまいなしで草をなぎ倒しながら爆音をたてながら無心で進んでいく様は、他国に侵略していく戦車のようで、まさに開拓者と形容するのがふさわしいと思う。

いやーよくやるわ、と思うかもしれないが、田舎の風景が美しく思うのは、その自然にきちんと人の手が入っているからだ。荘厳な手つかずの自然も美しいと思うが、手つかずの自然が見られるスポットに行くまできちんと人の手が入っているだろう。本当に手つかずの自然は人が寄り付くことさえ困難だろう。そのような田舎ののどかな風景に、農民の汗水がしみ込んでいるのだと思うと、より美しい風景に思えてくるかもしれない。

暑い草刈りは涼しい木陰で休憩

ひょんなご縁から理想的な環境の古民家に出会ったデザイナーが、その日々の中で身につけた業を、日々の暮らしとともにアーカイブして行くウェブサイト。100の業が溜まったら、cotocotoというタイトルで誌面化予定。

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