Tip92: 洗面台をつくる

洗面台の多くは丸ごと既製品を使うか、天板に洗面ボウルを埋め込んで作られている。今回は洗面ボウルまでを自作してみたので、その手順を記す。

まずは設計図通りに洗面台の骨組みを組んでいく。たわむと仕上げのモルタルがひび割れるので、材同士は多めのビスと、ボンドを併用してがっちりと組んだ。

洗面台が他の家具と違うのは給水管、排水管を通す必要があることだ。逆に言えば給水管、排水管を通す穴さえ開ければ他の家具の作り方と同じなので、なんとなく難しそうなイメージで敬遠し続けるのももったいない。

混合栓取り付け用の直径32mmの穴を開ける。(器具によって違うが、一般に混合栓が35mm、単水栓が25mmで開けることが多い。35mmの穴でよかったのだが、ぎりぎりで入るサイズにしておいた。)位置は水が落ちる位置がシンクの奥から1/3くらいの位置にした。水が落ちる位置も案外重要で、手前すぎると手が入れにくく感じたり顔が洗いにくかったりするし、奥すぎると水が洗面台の上に跳ねやすいので奥から1/4〜1/3くらいが良い。

開けた穴の上から混合栓を通し、下から混合栓の下部についているネジを閉めてテーブルに止めるが、ネジの長さは普通それほど長くないため、分厚い洗面台(おおよそ30〜40mm以上)だと止められない。そこで、事前に水栓設置箇所の洗面台の下を一部掘り込むような造作をしておく。彫り込むサイズは奥まで手が入るサイズでないと水栓取り付け時に苦労する。

排水栓取り付け用に41.3mmほどの穴を開ける。(45mmの穴でも良いが、混合栓の穴と同様、こちらも排水栓のネジがギリギリで入るサイズにしておいた。JIS規格の排水穴径は41mm。)排水位置はシンクの中心にした。

排水栓に接続するSトラップは一般的に日本で使われている32mmの規格のもの。トイレのちょっとした手洗いなどには25mmも使われる。床から出しておいたVP管は床と面一で切り、パッキンをはめこむ。50のVP管と32mmのステンレス管に適合するものをちゃんと選ぶ。

水勾配をつくる

排水口に向かって水が流れるように勾配をつくるために、シンクの底に使った30mmの木の板を削った。等高線状にルーターとトリマーで深さを1.5、3、4.5、6、7.5、9mmと変えて掘っていった。各深さの部分を掘るときほんの少しだけ削らずに元の高さの部分を残しておくことで全体を一定の深さで彫った。最後に残ったところを鑿でさらえ、サンダーで等高線を消すように削って仕上げた。

その後、FRP防水を全面にかけたが、その手順はTip90のとおり。機能的には防水をかけたら完成で良いのだが、見た目をコンクリートのようにしたかったので、その上にモルタル風仕上げを施した。

モルタル仕上げは最近流行っているが、モルタルはクラックや水染みができやすいもので、実際には水がかかる場所の仕上げに向いているものではない。洗面台のモルタルはできれば伸縮性や防水性のあるモールテックスがやはり良いが高い。そこで、全面FRP防水をかけてクラックができても水が漏れることがないようにしてみた。以前組んだトイレの床と同じようにNSカチオンワン#2を下地とし、仕上げに使える薄塗りモルタル風のNSハードフロア仕上げとした。

まず、シンク裏側は木下地のままなのでアク止めシーラーを二度塗り。乾いたらカチオンワンを塗りたい面積分に必要な分量をバケツに入れ、水の量をちゃんと量ってかくはん機でしっかりと混ぜていく。こするように全体に2mmほど塗りつけ。洗面台の下は上向きに左官がうまくくっつくか不安だったが土間用の大きいコテにネタをのせてこすればまあまあうまくいった。入隅と出隅も専用のコテを使えばそこそこきれいだ。

ただ、事前に難接着面用に日藻プライマーというものを買っていたのを忘れていた。FRP面には表面に硅砂を振りかけてざらざらに仕上げたので大丈夫だろうが、風呂場では忘れないように塗ろうと思う。

最後NSハイフレックスという下地調整材を5倍希釈で塗って2時間ほど置き、NSフロアハード塗り付け。NSフロアハードは過度な鏝押さえや水打ちをすると白っぽくムラになるようだが、素人にそこまで配慮する余裕も無いのでムラっぽさもいい感じになることを願いながら仕上げた。

洗面台が仕上がったら壁を塗って、水栓、照明器具等を取り付けて、収納扉と鏡を取り付けたら完成。

丸太を彫り込んで彫刻のように何かを作りたい

このオリジナル洗面台は2作目で、1作目は切ってきた丸太を彫り込んでTip46のようにウレタン塗装で仕上げたので、その手順も記しておこう。

ホームセンターで買ってきた木でなく、切り出してきた大木を使って何かを作りたくて丸太のまま1年ほど放置しておいたナラの木を材料にして作った。乾燥させるために置いていたが、重すぎてダンプで土の上に落とした状態のままだったので虫が湧いているし、全く乾燥していないのは反省。

まず、虫が食っているところを外して木取りの目処を付け、チェーンソーで荒く縦に割る。このとき、中心を外しておくこと。年輪の中心の材を使うと乾燥とともに歪んだり割れたりしてしまう。

電動ミニカンナで水平な表面を作る。横から睨んだり、定規を何度も当てて確認。

各水栓が取り付く位置、材を切る位置を仮で墨付けし、チェーンソーで+100mm程度など予定の幅より少し余裕を持って切る。チェーンソーで洗面器になる部分を彫り込む。

木の板の模様や、虫食いなどの様子を見ながら木のどの部分を使うか確定させて墨付けをし、水平面を基準にして指定寸法に切る。

形を修正しながらやすりがけをしていく。

給水栓用の穴を開ける。

排水栓用の穴を開ける。

洗面台を支えるために左右の壁に止める桟のサイズの彫り込みを洗面台にも作る。

パテで穴埋めし、乾燥後にまたやすりがけ。

完成したら木固め材、目止め剤を塗る。丸太のままだと数年乾燥させた程度では乾燥しきらず変形する。この作業は何日もかけて行なうと木が割れてくるので、木を割ってから木固め材を塗るまでは手早く行なうのが良さそうだ。

いよういよウレタン塗装だが、その手順はTip46のとおり。

あとは設置して完成。

ひょんなご縁から理想的な環境の古民家に出会ったデザイナーが、その日々の中で身につけた業を、日々の暮らしとともにアーカイブして行くウェブサイト。100の業が溜まったら、cotocotoというタイトルで誌面化予定。

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