Tip43: 木に登る

木登りで自然に親しみつつ、生き物として必要な体幹や好奇心を味わう。

昔は村中を自転車で走り回ってよく木に登った。昨今は外で遊ぶ子どもたちが減ってしまってそういう風景を久しく見ていないのは少し寂しい。木登りは全身を使う運動で、基本的な筋力やバランス感覚が鍛えられるとともに、考えること、自然への興味や、高いところに登って来た達成感など、多くのことを体感できる理想的な遊びだと今になって思うのだ。だから私はまた木に登ってみることにした、というわけではない。

大人は木に登って仕事をしてみる。

この集落の各住戸のテレビに電波を届ける共聴アンテナの設備が劣化しており、集落全体が共聴アンテナから光テレビになるという。我が家は光回線が届かないエリアと言われてしまったため、家の周りで一番高い木の上に個別のアンテナをあげて、電波を受信しないか試してみることにした。

魚の骨のようなのがアンテナで、八木式アンテナと呼ぶらしい。

木登りと言っても木に登る事自体を楽しむこどもの遊びではなく、20m以上の高さで両手を離して作業をする、言わば大人の木登り。つまり高所作業なので命綱が必須だ。腰回りにはロープやのこぎり、金具などがかかっていて、10kg近くありなかなか重い。

木に登る時には命綱をふたつ使い、ひとつは腰より少し高い位置の木の幹にひっかける。もうひとつは頭上の枝にひっかかるように放り投げて、かかったらそれを引っ張るようにしてあがって行く。前者は全長4m、後者には7mと、長めのものを使っており、どちらも長さを調整できるようになっている。基本的に2本とも使い、どちらかを掛け替える時も必ずもう一方がテンションがかかった状態で木にかかっている状態にしておくことで、とても安全に登り、無理なく両手をフリーにして作業をすることができる。

大人の木登りの方法は他にもロープだけをたくって登って行く方法もあって、それはツリークライミングというレクリエーションとして楽しまれたりもしている。細い糸におもりをつけてちょうど良さげな木の枝めがけて投げ、セッティングをすればするするとロープを登って行ける。降りる時もするすると下まで降りて来れるので楽しそうだ。ただ、20m程度の木を登るのに必要な45mのロープだけで例えば3.5万円など、なかなか費用が楽しくない。私の場合はとりあえず作業をできれば良いので、最低限の装備で3m前後の高さごとに命綱を掛け替えてちまちま登り降り。

木のてっぺんまで到達したら上からロープを下ろしてアンテナをくくりつけてもらい、上に引っ張り上げる。アンテナを木のてっぺんに仮固定したらアンテナから下ろしたケーブルをテレビにつないでもらい、電波の強度を確認してもらう。

結果、信号レベルは0。どの方向を向けても電波を全く受信しないという悲しい結末になった。村の区長に相談すると、共聴アンテナの電気代さえ払えば使えるまで使って良いというので、とりあえず様子見をすることに。

(後日、村の偉い方々が交渉して下さり、光回線が通せることになった。)

ひょんなご縁から理想的な環境の古民家に出会ったデザイナーが、その日々の中で身につけた業を、日々の暮らしとともにアーカイブして行くウェブサイト。100の業が溜まったら、cotocotoというタイトルで誌面化予定。

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