Tip63: 変速を修理する

田舎者が自転車で都会を行脚する

田舎から街に出るときは公共交通機関が不便なので、皆ほぼ100%車を使う。ただ、生活圏の中ではどこへ行っても車を停めるのにお金がかかることのない田舎民からすると、街の駐車場は億劫だ。車を停めて滞在すればするほど駐車場代がかかり、駐車場のせいでなんとなく早足になってしまったり気分的に急かされたりで、ちょっと気になったカフェに立ち寄ってノマドワークしてみたり、気の向くままにうろうろすることが減ってしまったりするかもしれない。

私はそれが嫌で目的地の繁華街より少し遠いが上限のある安い駐車場に停めて地元人と同じように街中を自転車で行脚することを好んでするようになった。車に積むから折り畳み自転車にしたが、結局ほとんど折り畳まずに積んで、夜が更ける頃まで存分に街を楽しんだ。神戸でも京都でも私を見かけた誰もが地元人だと思ったに違いない。

先日、使っていない自転車はないかと家族から声が挙がったので岡山暮らしで久しく乗っていなかった相棒を引っぱり出してみたところ、グリップについている変速機が硬くて動かなくなってしまっていた。都会人ぶらせてくれた相棒の自転車に感謝の気持ちを込めつつ、修理することに。

変速機の修理方法

そういえば以前乗っていた頃も変速が少し硬くなったと思ったこともあったように思う。外目にはワイヤーに異変は見当たらないが、徐々に硬くなったのであればサビなど何か物理的劣化だろう。自転車の変速やブレーキを制御するケーブルは二重になっていて、中がワイヤーで外が中空のチューブ。変速のグリップを動かすことで中のワイヤーだけを引っ張って変速が変わるようになっている。ワイヤーはグリップシフト側に止めがあり、グリップ側から抜く。とりあえず後ろ側の変速機(リアディレーラーと呼ぶらしい)にネジ止めしてあるワイヤーを外してハンドルのグリップシフト側からワイヤーだけを引っ張ってみるが、やはりワイヤーが動かない。ケーブルとグリップ側の変速機を分解して引っ張るも抜けず、ハンドルからグリップもパイプレンチで外してグリップシフトも外してワイヤーを真っすぐにしたら、中のインナーワイヤーを引っ張りだすことができた。見てみると確かにサビが。正直、思ったほどではあったが、この程度のサビで変速は動かなくなるシビアなものらしいことが分かり、勉強になった。次はサビないように新しいワイヤーはスチール製でなく3倍ほどの価格がするステンレス製のものにしておいた。それでも数百円だ。ワイヤーを抜いたアウターケーブルに潤滑防錆剤を吹き込むと、茶色いサビが逆側から出てきた。

グリップシフト側から順番に新品のワイヤーを取り付けていき、ついでに変速機のギア(ガイドプーリーという部品らしい)も欠けていたので同じパーツを購入し、新品に交換。(プーリーのみのパーツは売っていないらしく、本体ごとでも1000円ちょっとと安いが気分的にもったいない。)六角レンチでギアを外して元と同じようにチェーンを通す。変速を一番重くし、一番小さいギアにチェーンをはめた状態でワイヤーを少し引っ張ってワイヤーが取り付いていたのと同じようにねじ止めする。ワイヤーの引っぱり具合は手で普通に引っ張れる程度。慣れるまでその具合が難しいが、ワイヤーが止められたら後で変速がきちんと動くか何度か試乗しながらちょうど良い張り具合を見るのも勉強だ。

自転車を生んだ素晴らしい想像力を思う

自転車は発明されて200年ほどしか経たず、実は自動車よりも歴史が50年ほど新しいらしい。静止していたら自立できないものが走ると安定し、誰もが乗りこなせるようになる未来を誰が想像したのだろう。自分の足の力だけで早く移動できるという物理学をうまく生かしたアナログな機械だというのもそうだが、そういうとんでもない想像力や試行錯誤の産物だと思いを馳せてみると、とてもロマンに満ちた乗り物に思えてくる。十代の頃、神戸から北海道まで行くのに買ったちょっとだけ良い自転車も放置したままなのでそっちもまた今度、整備してあげよう。

ひょんなご縁から理想的な環境の古民家に出会ったデザイナーが、その日々の中で身につけた業を、日々の暮らしとともにアーカイブして行くウェブサイト。100の業が溜まったら、cotocotoというタイトルで誌面化予定。

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