田舎に暮らしていると農機具や灯油等を入れるときによく使う手動ポンプ。通称、シュポシュポ。シンプルな物は100円〜300円ほどで手に入る。数年前に少子高齢化でなくなってしまった村の夏祭りの時にはハズレなしのビンゴゲームがあったが、その景品で手に入れたことがあるくらい田舎では皆が使うものだ。よく見るものは赤色をしているが、私は用途別に色違いを使い分けている。
使い方は単純で、伸びている2本のホースのうち、まっすぐな方を燃料を吸い上げる方に、蛇腹で曲がる方を燃料を入れたい方に入れ、空気のつまみを閉じ、あとはシュポシュポ握れば握った分だけ燃料を送ってくれる。
これで十分使えるが、ずっとシュポシュポ握っていなくても燃料を送る使い方があって、それを知らないまま使っている人もいるかもしれない。実はこのシンプルな装置の中に農民の物理学が息づいていて、これを知ることで初めてどこにでもある安物のポンプがグッドデザインに見えてくると思う。
そのためには燃料を吸い上げる方のタンクを台の上に乗せるなどしてホースの出口を油面より高い位置にくるようにするだけ。
あとは、シュポシュポの上についているネジ状になった空気弁の蓋を閉め、勢いよく数回シュポシュポしてホースの中を燃料で満たしてやれば、あとは見ているだけで勝手に燃料が入っていく。これをサイフォンの原理という。
これを利用すると楽だし、握る回数が少ない分、ポンプも長持ちする。
油面が同じ高さになるまで勝手に流れるので燃料をこぼさないようにしっかり見ておく必要はある。自動給油を止めたい時は空気の蓋を開ける。蓋を開けてからもホースに入っている燃料が落ちてくるので満タンより少し早いかもというくらいで蓋を開いて、あとはシュポシュポして少しずつ入れていくのが良いと思う。逆に言うと刈払機のような小さなタンクに入れるときはひたすらシュポシュポする方がこぼれにくくて良いかもしれない。
最近は高低差を気にせず自動で吸い上げて自動で止まってくれる電池式のシュポシュポなど、便利アイテムが出ていたりするので案外この使い方を知らなくてもそこまで困らない。だが、実はTip83: 高圧洗浄するで水を溜めたバケツを高圧洗浄機より高くに設置し、洗浄機のホースに呼び水をしたのも同じ話。雨水を溜めたプールの水を動力ポンプの使えない場所で抜きたい時、あるいは池の水を利用したい時などにも使えるかもしれない。
物理法則と繋げてものの使い方を知っておけば、よりフィールドで強くなれる。これを知って水を扱う米農家としてほんの少しレベルアップしたような気もしなくもない。