Tip33: ペンキを塗る

壁下地を作る

ペンキを塗ると言っても、塗るまでにペンキを塗る面を作るほうの仕事が大半だ。まずは壁の骨組みをつくり、断熱材を充填、配線がおおよそ済んだところで石膏ボードを張る。今時の住宅の内装にはこの石膏ボードというものが安くて早いので使われている。もろくてやわらかく、角をぶつけるとすぐに欠けてしまうので、運搬は慎重に。丸ノコで切るときは表面の紙がささくれ立たないよう、裏から切ったり、手のこで裏から切るならノコを引くときのみに刃を入れるなど、切るときも慎重に。

石膏ボードは3 x 6尺の通称サブロクというサイズのものが多く使われており、その外周と中心に木の枠を組んでいく。この木下地にビス等で石膏ボードを張ると壁ができ、ようやく部屋っぽくなるが、継ぎ目やボードを留めるビスが丸見えなので、壁を塗る前にこのボード間の継ぎ目とビスの頭の部分をならすためにパテという、やわらかい粘土みたいなものを塗ってフラットな面をつくっていく。もちろんパテを塗る前には必要な箇所にマスキングを。ボードとボードの取り合いの出隅にはコーナーテープを貼り、軽い衝撃で角が欠けてしまわないように補強。クラック防止のためにボードとボードの間にはファイバーテープを貼るとなお良い。

パテの粉を水と一緒に練って隙間を埋めていくのだが、乾燥したら痩せてくるので2,3回同じところに塗っていく。はじめに細く、穴を埋めていくように塗り、回数を重ねるごとに薄く広く塗っていき、パテでボードの継ぎ目に段差がなくなれば、あとはきれいに壁が仕上がったも同然。これが簡単そうに見えてかなり難しい。この下地をうまく作れるかでほぼ仕上がりが決まってくるだろう。仕上げにパテしごきと言って、ボード全体にパテをこすっては取りを繰り返していけばパテを塗料の吸い込みなどが安定してさらに良い。ただ、素人感が出ても良いのであれば1回塗りで継ぎ目がほぼへこんでいるような仕上がりでも、ペンキを塗れば、石膏ボードを張ったことのない素人目には気にならないようだ。

ペンキを塗って大きな平面をつくる

準備が完了し、いよいよペンキを塗る。Tip14: 左官壁づくりと同じようにマスキングして隅を刷毛で塗り、ローラーでペンキを塗っていくだけだ。塗るときは刷毛やローラーについた余分なペンキを落とすこと等、多少のコツはあれども、ここまでしっかり下地をつくれていたらとりあえず塗って行けば白い大きな平面ができて、工事中の部屋から見違えて一気に部屋っぽくなる。塗料にもよるが、多くは2回塗りだ。

クロスを貼らずにペンキを塗る理由

なお、日本の住宅はクロスで壁が仕上げてあることが多いが、クロスでなくペンキを塗るのはビニールを貼ることがあまり好きでないためだ。クロスはビニールでできているものが多いのだが、家の壁を全てがビニールに覆われた気密性の高い家というのはなんだか健やかではない気がするのだ。木質系や珪藻土風のクロスもあるが、ペラペラの「風」というのがあまり好きでない。布や紙のクロスもあって悪くはないが、クロスが剥がれてくるとかなりみっともないように見える。そのため、壁は左官や材質感のある木、あるいはせめてペンキ塗りで仕上げたいと思っている。

壁を立てるということ

壁を立てるとそこの空気、音、すべてが仕切られ、シェルターにもなる。空気もその部屋で暖められたり、いつでも服を脱ぎ着できるし、好きな音楽や映画を見てごろごろできる。壁に仕切られているという安心感はものすごく大きく、例えばそこがサファリのど真ん中でも壁を立てるだけでごろごろくつろげるようになるだろう。

なお、壁と言ってしまうと内外を仕切ってしまうものという印象だが、日本ではこの壁が垣根、軒、縁側、障子というように徐々に光を落とし、内に入って行くような作りになっていて、うすい壁のようなものが幾重にも重なって心地よい内と外の繋がりを作り出しているとよく言われている。内と外を分け隔てて心地よい環境をつくる壁の作り方を引き続き考えたい。

ひょんなご縁から理想的な環境の古民家に出会ったデザイナーが、その日々の中で身につけた業を、日々の暮らしとともにアーカイブして行くウェブサイト。100の業が溜まったら、cotocotoというタイトルで誌面化予定。

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