Tip21: 田を植える

いよいよ百姓の本業、田植えの時期だ。

うちの事務所ではかつての会社や学校のように田植えと稲刈りの時期に年2回、各1週間ほどの臨時休業をいただいて田植えの作業をしている。大した収入になる訳ではないのだが、全国的に地方で担い手不足が叫ばれる中、豊かな里山の風景や、人とのつながりなどを守るために、自分の暮らす場所にできることをしているという感覚でいる。

臨時休業とはいえそこそこ毎日が忙しく、朝早くから起きて、1日中、村中の田んぼで体を動かし、太陽が沈むと片付け、ビールを飲みながら次の日の段取りについて話し合い、夜に臨時休業にしているとはいえ、どうしても止められないデザインの仕事をしつつ、また朝早くから動き出すという生活スタイルで、どこかに出かけることなくほとんど村の中で行動が完結する。そして今日、ようやく田植えがほぼ終了したので落ち着いてこれを書くことができた。

私たちの集落では集落営農と言って、共同で田んぼを管理している組織があり、村の多くの人はその組合に参加して作業を行っている。組合では東京ドーム8個分ほどの米を毎年植えおり、それを10人前後で1週間から10日かけて植えていく。植えるのはもちろん田植機を使い、苗を補給したり、田んぼの水量を調整したりする人、機械に乗る人など2、3人のグループに分かれて作業をしていく。

うちで使っている田植機は機械に乗り込み、走りながら植えていくもので、それほど操縦が難しい機械ではないのだが、一度植えてしまったところを通るとタイヤで苗を踏んでしまうので、一筆書きの要領で植えていく必要がある。次の列の中心に来る位置にマーカーと呼ばれる風車のような部品で印をつけながら、5〜10cm以下の精度で走行し、その印と前の列に植えた稲の位置を基準に次の列を植える。多少曲がったとしても収量が変わる訳でもないし1ヶ月もすれば分からなくなるのだが、作業委託をされて植えるので見てくれ上は真っすぐ植えるのがベストである。田んぼの形や出入り口の位置、土や水の状態によって最適な植え方を考えるためには多少の経験が必要で、運転のうまい人の補助についたり自分の家の田んぼなどで練習しなければならない。私もこれまで東京ドーム20個分ほど担当して、ようやく免許皆伝、と言ったところだ。豊かな里山の風景を守るため、これらの技術を次の世代にどんどん渡していきたい。

ひょんなご縁から理想的な環境の古民家に出会ったデザイナーが、その日々の中で身につけた業を、日々の暮らしとともにアーカイブして行くウェブサイト。100の業が溜まったら、cotocotoというタイトルで誌面化予定。

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