Tip26: 剪定する

田舎の家はお盆の前にはご先祖様をお迎えする前に、庭木の剪定をする。

庭には必ずメンテナンスが必要

剪定とは木の枝を切ったりしながら樹形を整えることで、家を買って庭木も付属品で買うつもりぐらいの人にはあまり必要性を感じないかもしれないが、庭に木を植えるなら必ずと言ってしなければならない作業だ。メンテナンスの必要があまり無い樹木もあるが、そのほとんどはメンテナンスの必要があることを庭木を買う前に覚えておいてもらいたい。

剪定をしなければ山に生えている木に戻ってしまう。山のワイルドな木も美しいのだが、庭には大きくなりすぎて、放置しているとやがて家すら飲み込んでしまうだろうし、他の生き物の住処にもなるだろう。人間が住む家のすぐ外にある庭なのだから、木陰で涼みながらBBQをするなど、人間に快適なようにしたい。そこで、木々の樹形を整え、高さも大きくなりすぎないようにし、日光や風を通して虫の住処になりにくく健康を維持できる環境にしてあげる。庭に手を入れることは、人の手を入れてこそ美しい里山の風景が作られるのと同じだろう。

いらない枝を落としていこう

その樹種やしつらえ方によって剪定の方法や適当な季節があるので剪定は生涯勉強だが、基本的には忌み枝と呼ばれるいらない枝を落としていく作業が中心となる。天に向かって伸びすぎた徒長枝(とちょうし)をその根元で切り、木の内側など変な方向を向いた立ち枝、逆さ枝、交差枝やからみ枝、枯れ枝など、とにかく不要な枝を取り除いていくと、そこそこに見えるだろう。そこから樹形のエッジをきれいに揃えたいときは両手ばさみやバリカンを使うし、葉が厚いときはそれらを間引いたり、なるべく自然なまま見えるよう形を整えたり。その木がその庭に美しく見える姿に仕上げていく。私の腰道具は写真右から植木ばさみA型、剪定ばさみ、折鋸で、この3つを切る枝の細さで使い分けている。

植木屋になってみよう

剪定は田舎の人たちは父が自分でしている家も多いが、できなければもちろん植木屋に頼んでも良い。ただ、植木屋さんは大抵来れる日に全ての樹木を剪定してしまうのだが、できるのであれば本当は生えている樹木の一番いい季節に、一番いい方法でメンテナンスしてやるのが理想だから、理想の庭をつくるには、自で庭の剪定をするのが良いに違いないと思う。身近な自然に手を入れてやると、暮らし方をデザインする視野が屋外まで広がってくる。自然の美しさについて考えるし、体動かし心洗われることもあるかもしれない。そんな植木仕事が私は好きだし、庭を持っている方で、特にデスクワークをしている人にはぜひトライしてもらいたい。

庭をつくるということは、自然に親しむライフスタイルを選択すること

暮らしの場に木や草花があると、やわらかな境界をつくり、建築の表情を柔らかくし、季節や時間の移ろいを楽しめる場になる。日々の手入れをしながら、そういう移ろいをより楽しむことができる。庭は立派な家にはあるもので、格式を表すものである側面は当然あるのだが、昨今の若い世代にはそういう意識が薄れてきていて、これから庭をつくるということは、自然に手を入れ自然に親しむライフスタイルを選択するということだと思う。豊かさを手にするために、そういう暮らしを選択する人が増えてほしいと願っている。

ひょんなご縁から理想的な環境の古民家に出会ったデザイナーが、その日々の中で身につけた業を、日々の暮らしとともにアーカイブして行くウェブサイト。100の業が溜まったら、cotocotoというタイトルで誌面化予定。

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