Tip36: 開き戸をつける

せっかく自然がたっぷりなロケーションなので、自然を楽しんでもらいたい。そこで、コンクリートの地面を歩いて家に入るのでなく、木陰をくぐったり季節の花を眺めたりしてアプローチした先に玄関を設けようと考えた。屋外から屋内まで同じように導線を通すことで連続した空間体験となり、人を迎えるしつらえにできるだろうし、とてもドラマチックだ。戸が透明ガラスなら屋内からも外の庭がよく見え、自然を感じながら暮らせるだろう。

建物正面には窓があるが、これを扉に変更する。たまたま解体現場で手に入れて来たもので、小さめのサイズ感と使い古された感がこの建物にとてもマッチする。

はじめは木製建具をつくろうかとも思っていたのだが、建具は1mm以下の精度で開きが悪くなったりしてしまうので難易度が高く、大工以上に精度が要求される。そんなときは建具屋さんの出番だ。木製建具を作るときは良く乾いた材を同じ木から対に切り出したものを使ったりするらしく、建具材専用の材木屋もあるほど。そこまでしなくても開き戸なら大丈夫だろうかと悩んでいたところ、応援で行った解体現場にちょうど頃合いのものがあったのだ。

まずは窓と窓枠を外し、Tip15でやったとおり、枠をはめる高さと幅のモルタル壁と基礎をグラインダーで切断し、Tip8でやったように、電動ハンマーも使って壊していく。

壊せたら建具枠をつくる。本来はもっと狂いにくいものを使うべきだが、今回はホームセンターで売っている足場板を使った。安いし、枠に建具の重さを負担させないよう、枠を固定するための骨組みをしっかり作ればそれほど狂わないと思う。自分で設置するので狂っても直せる。足場板の表面はぼそぼそしているが、カンナをかければ綺麗になった。

その枠を建具のサイズに合わせてつくり、蝶番をつけて、完成、と思いきや、建具上がぴたっと合っているのに、下には微妙な隙間ができてしまう。よく見てみると、扉は長方形ではなく、経年により立面方向にも平面方向にも歪んでいた。そこで、そのできた隙間に合わせて枠を組み、モルタルを練って流し込む。こういう現場合わせもアンティークならでは。

仕上げに、ドアクローザーを取り付ける。普段はあまり意識しないが、玄関の開き戸が自動で閉まってくれないのは違和感に感じるだろう。それほど玄関の開き戸にはどこの家でもほとんどドアクローザーがついている。ドアクローザーとはその名の通り勝手にドアを閉めてくれるもので、大きく開くとそこで止まってくれるようになっている。作業自体は説明書にある図面の位置に下穴をあけ、そこにドアクローザーを取り付けるだけ。

そして玄関ドアの機能として最も重要なのが鍵だ。鍵は戸を彫り込んでつけるが、買った鍵が戸に合わなかったため、後日つけよう。

ひょんなご縁から理想的な環境の古民家に出会ったデザイナーが、その日々の中で身につけた業を、日々の暮らしとともにアーカイブして行くウェブサイト。100の業が溜まったら、cotocotoというタイトルで誌面化予定。

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